2022年10月20日木曜日

失明の恐れのある緑内障、糖尿病網膜症

ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 院長


失明につながる目の病気について教えてください。


 日本人の中途失明の原因として最も多いのが「緑内障」で、2番目は「糖尿病網膜症」です。

 緑内障は眼圧に対して網膜の神経細胞が弱く、損傷を受けて視野が欠けていく病気です。日本では40歳以上の20人に1人が緑内障であることが分かっています。

 緑内障は視野の一部が欠けていきますが、脳の働きで見えないはずの部分を補ってしまうため、症状になかなか気付きにくいです。異常に気付くのは相当に進行してからで、手遅れになりやすいのが厄介な点です。

 一度失ってしまった視力や視野は戻りません。できるだけ早く発見し、早期に治療を開始することが何よりも重要です。主な治療は眼圧を下げる点眼薬で、きちんと継続すれば進行を止めたり遅らせたりして失明を免れることも十分可能です。

 糖尿病網膜症は、糖尿病にかかったことにより起こる合併症の一つ。血糖の高い状態が続き、網膜の血管が障害されて起こります。段階的に進行しますが、多くの場合、自覚症状はほとんどないまま進行していきます。

 進行した段階では、網膜から新生血管というもろい血管が硝子体に伸び、それが破れて硝子体出血を起こして、飛蚊症や眼のかすみ、視力低下を自覚することがあります。また、硝子体中に増殖膜という線維性の膜ができ、その膜が網膜を引っ張ることで網膜剥離が起きます。そしてそれを放置すると、失明に至ることもあります。

 治療は血糖コントロールを基本に、レーザー治療や抗VEGF硝子体注射、硝子体手術などを病期に応じて選択します。進行しているほど治療をしても良好な視力への改善が難しい場合も少なくないです。糖尿病網膜症が原因の失明を防ぐとともに、可能な限り視力回復・改善を目指すには、早期発見・治療が原則。そのためにも、糖尿病と診断された時から定期的な眼底検査などのチェックが非常に大切です。

 緑内障や糖尿病網膜症のように、「見える」を脅かす病気は気付かないうちに進行することが多いです。そのほとんどは眼科検診を定期的に受ければ早く発見でき、治療を始められるものです。これらの診断や治療効果の判定には、眼球の断面図を鮮明に見ることができるOCT(光干渉断層計)を使った検査が有用です。特に40歳を過ぎたら、ぜひ1年に1回、眼科検診を受けてほしいと思います。


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