2022年10月13日木曜日

認知症

ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院  正木慎也 診療副部長


認知症について教えてください。

 認知症とは、一つの病気の病名ではなく、何らかの原因で脳の細胞が死んだり、働きが悪くなったりして、物事を記憶したり認識したりする能力である認知機能が十分でなくなり、従来の生活が送れなくなった状態を指します。認知症は年を重ねると誰もがなりうる病気です。人口の高齢化に伴って増え続け、2025年には高齢者の5人に1人の約700万人が認知症になるとの予測もあります。

 認知症にはさまざまな種類があります。最も多いのは「アルツハイマー型」で、早期症状の代表的なものは「新しく体験したこと、学んだことをきちんと記憶しておけない」という記憶障害です。予定や約束、日程なども忘れがちで何回も周囲に確認し、言付けも不確かになります。そのほか、脳梗塞や脳出血などが原因の「脳血管性」、実際にはそこにないものが見える幻視や、手足の震え、筋肉が固まるなどパーキンソン病のような症状がみられる「レビー小体型」、感情の抑制がきかなくなり、人格が変わったような変化が起きる「前頭側頭型」などがよく知られています。

 認知症の症状には「中核症状」と「周辺症状」があります。中核症状は、記憶障害や理解・判断力の低下などで、ほとんどの患者さんにみられます。一方、周辺症状は、中核症状が原因となり、それに元々の性格や環境、周囲の人とのかかわりの中で起こってくる症状(不安、うつ症状、もの盗られ妄想など)で、人によって出たり出なかったりします。


治療について教えてください。

 多くの認知症はいまだ根本的な治療法が存在しません。しかしながら、症状が軽い段階のうちに認知症であることに気付き、適切な治療が受けられれば、薬で症状の進行を遅らせたり、認知症の種類によっては症状を改善したりすることもできます。早期診断・治療によって、高い治療効果が期待できるのです。

 年相応のもの忘れと認知症の中間には、もの忘れは目立つものの認知症のように日常生活に支障を来さない「軽度認知障害(MCI)」という状態があります。進行すると認知症に移行する恐れがあるため、そういった意味でも早期に対応が求められます。

 ちょっとした症状でも、気になることがあればすぐ専門医を受診することが大切です。

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