2022年4月6日水曜日

うつ病と食生活の関係

 ゲスト/医療法人社団正心会 岡本病院 鈴木志麻子 医師


うつ病と食生活の関係について教えてください。

 平成29年の厚生労働省の患者調査(3年毎に調査)によると、気分障害(うつ病、躁うつ病など)で治療中の患者さんは約127万人と推計されるなどここ20年で3倍に増加しました。近年の新型コロナ感染症の影響でも、メンタルヘルスの問題が増加しているのはご存じのとおりです。

 うつ病治療の基本は、主に①脳(心)の休息(睡眠の確保他) ②環境調整(ストレス負荷の軽減)③心理療法(物事の捉え方の転換、ストレス対処など) ④抗うつ薬、の4つが重視されてきましたが、近年、運動や睡眠、食生活など生活習慣の改善が治療効果に大きな影響を与えるということが、さまざまな研究からわかってきました。うつ病と言えばストレス、と考えられがちですが、「生活習慣病」としてのうつ病という新たな視点があります。

 国立精神・神経医療研究センターが行った大規模なインターネット調査(2018年)によると、うつ病経験者は、そうでない人と比較して、糖尿病や肥満、脂質異常症が多い、間食や夜食の頻度が高い、朝食を抜くことが多い、運動の頻度が少ないという結果でした。インターネット調査の限界はありますが、この結果からは、うつ病患者では朝食や適度な運動が重要であり、余分な食事やそれに伴う肥満は有害となる可能性が示されています。つまり、体重管理やメタボ対策、生活習慣の改善がうつ病の改善につながる可能性があるということです。

 肥満がうつ病を引き起こすメカニズムについては、肥満になると脂肪細胞で慢性炎症が起こって脂肪細胞からサイトカインが分泌され、これらが脳神経に炎症を起こし脳機能に影響を及ぼすことからと考えられています。肥満を防ぐためには1日3食のバランスの良い食事、つまり、野菜、果物、豆類、魚介類、穀類などを中心に摂取する食事を心がけたいものです。ちなみに、緑茶を多く飲む人はうつ病が少ないという調査報告も複数あります。他にうつ病の予防につながると考えられる栄養素として、「EPA、DHA」「ビタミンB」「ビタミンD」「葉酸」「鉄」「亜鉛」「アミノ酸」などが報告されています。さらに、「腸脳相関」といって、腸と脳が相互に作用していることが分かりつつある今、うつ病と腸内細菌との関連を調べる研究も進められていて、乳酸菌や食物繊維で腸内環境を整えることがうつ対策になるのではないかと期待されています。

 このように、うつ病と食生活や栄養には様々な関係があります。うつ病治療の土台として「食生活など生活習慣の改善」が重要であることを多くの方に知っていただきたいですし、ぜひ明日から取り入れて頂ければと思います。

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