2021年10月27日水曜日

うつ病からの復職

 ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 小谷 育男 診療部長


うつ状態を来す病気や障がいについて教えてください。

 古典的なうつ病は、中高年で職場に過剰に適応するような働き方の人がかかるというのが典型的ですが、最近ではより若年の社会人・職業人としての経験が浅い人で、仕事には行けないが趣味的なことは病前と同様に楽しめたりする「新型うつ」や「ディスチミア親和型うつ」と呼ばれるような病像の方も増えています。

 ほかに、確かに初発がうつ状態であっても、気分が高揚したり、攻撃性や活動性が高まったりする躁(そう)状態が、目立たず気付きにくい形で病歴の中にある「双極性障害」の方もいます。また、職場不適応などで二次的にうつ状態を来す原因として軽度の知的障がいや、知的機能のアンバランスさや、「グレーゾーン」と呼ばれる境界知能に位置することが目立たない形で存在する場合も在り、うつをきっかけに受診したことで、こうした生きづらさの原因が明らかになるケースもあります。

 うつ状態の治療ですが、近年はさまざまな苦悩を和らげたり、回復するまでの期間を短くしたりする上で効果のある薬が充実してきました。ただ、本質的には休養や環境の調整が大切で、そこが十分にできないまま、焦って元の生活に戻ろうとして、かえって失敗してしまうケースも多くみられます。

 うつが重篤な時期には「思考抑制」といって物事を考えたり判断したりする機能も衰えますが、症状が改善するに従って思考抑制が取れ、状況が見えてきて焦燥が募るような心境になることも多々あります。患者さんご本人の心情に寄り添いながらも、焦ってしまって回復への道のりが台無しにならないよう、周囲の御家族や主治医、産業医などが協力して順当な判断をしていくことが大切です。

主治医や産業医との連携について教えてください。

 近年は事業所・職場のメンタルヘルス対策の態勢も整いつつありますが、力の入れようは個別の事業所によってさまざまで、専任の産業医がいない職場や北海道の職員の相談も首都圏等の遠隔地からの通信で対応しているケースもあり、中には大部分を外部機関に任せているようなところもあります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、復職プログラムも遠隔からのカウンセリングに限定され、本人の回復度と不適合な内容で、かえって自信を失ったり自尊感情が低下して、回復が遠ざかる場合もあります。復職へ向けての進め方は、適宜、病状や職場の状況を踏まえて、主治医と産業医、職場の衛生担当者が協議しながら実情に即して進めていくことが、「コロナ前」と比べてもより重要になっているといえます。

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