2021年10月6日水曜日

白内障手術が心身機能に及ぼす好影響

 ゲスト/月寒すがわら眼科 菅原 敦史 院長


白内障とはどのような病気ですか。

 白内障は目の中でレンズの役割を果たす水晶体が濁って見えにくくなる疾患です。白内障の原因の大半は加齢に伴うもので、早い人では40歳代に発症します。50歳、60歳と年代が上がるにつれ罹患率は増え、80歳代ではほぼ100%がかかるとされています。

 初期の白内障は点眼薬で進行を遅らせることができますが、濁った水晶体を元に戻すことはできません。進行した白内障には手術が行われます。手術では眼球に2.4mm程度の極めて小さい切開を行い、超音波によって水晶体を細かく砕いて取り除きます。代わりに、人工の水晶体である「眼内レンズ」を挿入します。局所麻酔を使用するため手術中の痛みはほとんどありません。手術は10~15分で終了し、最近は日帰りでの手術が主流になっています。


白内障手術が視力の回復・改善のほかに、心身に及ぼす好影響について教えてください。

 目は五感の中でも特に重要な感覚器官で、人はその情報の8割以上を目から得ているとされます。「人生100年時代」といわれる今、これからの高齢化社会では、元気に自立して日常生活を送ることができる「健康寿命」を延ばすことが大切ですが、そのためには、年齢を重ねても健やかな視界を保てるように目の加齢対策が非常に重要です。見えにくさを我慢するのはストレスですし、何より転倒のリスクが増大します。また、交通事故のリスクが高まり、万一の災害時にも困ることが多くなります。白内障は年を取ると避けられない病気ですから、白内障手術は健康寿命延伸の大きなカギを握っています。

 白内障と診断された65歳以上の米国女性を最長20年余り追跡調査したところ、白内障の手術を受けた人は受けなかった人に比べ、がん、血管疾患、呼吸器疾患、神経疾患、感染症などによる死亡リスクが37〜69%低下していたとの研究報告が米医学誌に発表されています。また、白内障の手術を受けた人は受けなかった人に比べ、認知症や認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)になるリスクが下がるという報告や、睡眠障害のある人が、白内障の手術後、光が眼内(網膜)に届きやすくなり、体内時計が正しく動き出し、睡眠障害が改善したというデータも発表されています。

 ものが見えにくくなると、人の心身にさまざまな悪影響を及ぼします。日常生活に少しでも不自由を感じるなら、早めに眼科を受診して自分の目の状態を把握しておくことが大切です。


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