2021年10月20日水曜日

在宅(訪問)診療の役割とメリット

 ゲスト/医療法人社団 慈昂会 新道東在宅診療クリニック 小関 至 院長


病院に通うのが大変になってきました。在宅で診てもらう方法はありますか?

 現在の医療制度には外来と病院入院のほかに、「在宅(訪問)診療」というシステムがあります。これは通院が困難などで自宅での療養を希望する患者さんのために、医師が患者さんの自宅などに訪問して診察を行うものです。“在宅”とは自宅はもちろん、老人ホームや高齢者住宅も含まれます。医療機関によって異なりますが、一般的には訪問看護や介護ケアの指導・指示、療養生活の助言など、医療面だけでなく介護や精神面からもトータルでサポートしていくのが特徴です。患者さんだけでなく、ご家族も含めて支援するのが在宅診療です。

 在宅診療は、急病時に駆け付ける往診と異なり、前もって定めた日程に沿って定期的な診療を行います。月2〜4回の訪問が一般的ですが、急に体調が悪くなったり、普段とは違う症状が出たりした場合は、電話相談や緊急往診など24時間365日対応するクリニックが多いです。また、万が一の際に入院や、在宅ではできない検査や治療を実施できる医療機関と連携し、緊急時のバックアップ体制も確保しています。

 在宅診療では、自宅・施設での点滴や採血、在宅酸素療法、がんの指導管理・緩和ケア、薬局との連携による薬の処方・配達・服薬指導など、基本的には通院・入院するのと同等の医療を受けることができます。また、ご本人やご家族が希望すれば、在宅での看取りも可能です。患者さんにとっては通院や入退院の負担が減り、自宅という自分の好きなように過ごせる環境で診療やケアを受けられることが、在宅診療の最大のメリットといえます。

 新型コロナの感染拡大が医療や介護のあり方にも影響を与えています。感染対策で患者さんが外来受診を控えていること、また、コロナ禍での面会禁止などの不便さを解消するために、通院治療・入院治療から在宅診療に切り替える患者さんが増えています。持病が重症化しても病院には行きたくない、自宅で人生の最期を過ごしたいと意思表示される人も増えてきており、高齢者を中心に在宅医療の利用は今後さらに増えると予想されています。一方で、在宅を望んでもいろいろな条件があって“無理”だと思っている人がまだまだ多いようです。必要とする人ならばほとんどのケースで、住み慣れたわが家での診療に切り替えられるという選択肢があることを知ってほしいと思います。在宅診療を検討している人は、今かかっている病院の先生に相談するか、在宅診療専門のクリニックなどに直接問い合わせてください。

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