2018年8月29日水曜日

ゲーム障害(前編)

ゲスト/医療法人北仁会  いしばし病院 白坂 知信 院長

ゲーム障害について教えてください。
 世界保健機関(WHO)は今年6月、オンラインゲームやテレビゲームのやり過ぎで日常生活が困難になる「ゲーム障害」を新たな疾病として認定、依存症の一つとして国際疾病分類の最新版に加えたと発表しました。
 ゲーム障害は、ゲームをしたい衝動が抑えられなくなり、日常生活よりゲームを優先し、健康を損なうなど問題が起きても続けてしまう特徴があると定義されます。家族や社会、学業、仕事に重大な支障が起き、こうした症状が少なくとも12カ月続いている場合に診断できます。長時間ゲームをする人がすべて病気というわけではありません。分かりやすくいうと、ゲームの時間や頻度を管理できず、生活にいろいろな問題が出てもやめられない状態が続いていること。それが病気かどうかの分かれ目です。朝までゲームに夢中で学校や会社に行けなくなり、家族が取り上げようとすると暴れるなどは代表的な例です。
 社会生活が破綻するゲームへの依存状態は、以前から「ネトゲ廃人」などと呼ばれ、不登校や引きこもりの要因の一つにもなってきました。社会人にとっても、依存の結果、家族間のコミュニケーション不全を引き起こしたり、失職など深刻な事態を招くケースは少なくありませんでした。2013年に厚労省が発表した全国調査では、ゲームを含むネット依存の大人は421万人、中学・高校生は52万人に上っています。
 今回、WHOがゲーム障害を新しい病気と認定したのは、スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い、ゲーム依存がさらに広がり、世界各国で問題化していることが背景にあります。以前のゲーム依存はパソコンやゲーム機でしたが、今はスマホやタブレットが半分近くを占めます。いつでも、どこでも、気軽に遊べる分、誰もが依存症に陥る恐れがあります。ほかの依存症と異なり、子どもたちが陥りやすいのも厄介な点です。また、時間やお金をかけるほど有利になり、ゲーム中の仲間と協力するうち、家庭や学校、会社よりゲーム内の人間関係を優先させるようになります。スマホやタブレットの手軽さやオンラインゲームのさまざまな仕掛けが、依存性を高めているのです。
 ゲームをすること自体が「悪」なのではありません。ただ、利用し過ぎるとゲーム障害という病気になり得ることを理解し、予防を図ることが欠かせません。後編では、ゲーム障害の治療と予防についてお話しします。

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