2014年6月11日水曜日
新型うつ病
ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 橋本 真一 医師
新型うつ病とはどのような病気ですか。
近年、産業保健(労働者の健康対策を行う)領域では新型うつ病という言葉をよく耳にします。仕事となると心身の不調を訴えるが、私生活では元気になる新しいタイプのうつ病です。一方、いわゆる大学の学問的立場からは、新型うつ病という病名は正式には存在しないとの指摘もあります。
従来の典型的なうつ病(メランコリー型うつ病)は、まじめな中高年に多く、過剰に頑張ってオーバーワークとなった結果、心身ともに疲弊し、自分を責める傾向があります。それに対して、新型うつ病は若い人に多く、好きな活動の時は元気ですが、仕事中は不調となり、病気を他者のせいにしがちです。このため「怠けているだけ」「わがまま」などと性格の問題にされやすく、周囲からなかなか病気と理解してもらえません。しかし、本人は職場では本当に体調が悪く、苦しんでいるのです。
新型うつ病といわれるメンタル不調者が増加しているのには、今の若者たちの置かれている社会的背景が大きく関与しているように感じます。少子化で軋轢(あつれき)の少ない環境で育ったことや、会社では上司が多忙で若手社員を十分に指導する時間を持てない中、少人数の20代、30代の若手社員に仕事の負担が多くかかっていることなどの現代社会の諸相が、うつ病の病像に反映しているのではないかと私は考えています。
新型うつ病の特徴について教えてください。
新型うつ病の特徴を列記すると、①若い人に多い ②こだわりがあり、負けず嫌いで自己中心的に見える ③自分の好きな活動の時は元気になる ④仕事や勉学になると調子が悪くなる ⑤「うつ」で休むことにあまり抵抗がなく、逆に利用する傾向がある ⑥疲労感や不調感を訴えることが多い ⑦自責の念に乏しく、会社や上司など他人のせいにしがち ⑧不安障害(パニック障害、強迫性障害など)を合併することが多い、などがあります。
本人への対応は上司、産業医などが連携して行う必要があります。うつ病に対する正しい知識と対処方法が、職場でますます求められるようになっています。働く人やその家族と上司や管理職などの企業側の双方がメンタルヘルスに気を配り、また、企業としてはストレスケアと啓発教育、産業医が機能する体制の整備など支援強化を重視することが大切です。
(※新型うつの特徴については、傳田健三著『若者の「うつ」』からその特徴を抜粋(一部改変)して記載しています)
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