2011年5月6日金曜日

パニック障害

ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 山中 啓義 副院長

パニック障害とはどのような病気ですか。

 パニック障害はありふれた病気であり、約100人に1人が罹患(りかん)するとも報告されています。日本では、男女ほぼ同じくらいの割合で発症し、青年期(18〜34歳くらい)に発病することが多いとされています。パニック障害は、突然、何のきっかけもなく、動悸(どうき)や息切れ、呼吸困難、目まい、吐き気、「このまま死んでしまうのではないか」という恐怖感、不安感などのパニック発作が起こり、これが何回も繰り返される病気です。これらは10分以内に症状のピークに達するといわれています。その後は、おおむね30分以内、長くとも1時間以内に症状が消え去ることが多いようです。不整脈や狭心症など心臓の病気、気管支ぜんそくや過換気症候群など呼吸器の病気の症状と類似していますが、検査をしても体の異常を認められないことも、この病気の特徴です。
 パニック発作が何回も起こると、「また、あの発作が起こるのではないか」「外出先で発作が起きたらどうしよう」という不安感が常につきまとうようになります。これを「予期不安」と呼びます。さらに繰り返しパニック発作を起こした患者さんが、以前に発作を起こした場所や、発作が起きたときにすぐに助けを得られないような場所、例えば電車や地下鉄の中などを避けたり、恐れたりするようになります。これを「広場恐怖」と呼びます。このように、パニック障害には、「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」という三つの症状があるのです。

パニック障害の治療法について教えてください。

 パニック障害の原因については、さまざまな研究報告がありますが、脳のある部分(大脳、大脳辺縁系、青斑核、視床下部)に通常とは違った変化が起こっているのではないかと指摘されています。特に神経化学伝達物質であるセロトニンの分泌異常が関与されていると考えられています。
 パニック障害の治療には薬物療法が有効とされており、国内でも海外でも主流となってきています。特に、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)というタイプの抗うつ薬が、第一選択薬となっています。通常、飲み始めから数週間で効果を認めることが多いようです。薬剤の効果はゆっくり現れますので、医師の指示通り、内服を継続することが大切です。
 パニック発作はつらいものですが、決して死ぬことはありません。また、発作は通常は、数分で治まります。必要以上に恐れないようにしましょう。パニック障害を放置しておくと、うつ病を合併することも多いので、思い当たる症状があれば、まず精神科・心療内科を受診して相談してみましょう。

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