ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師
RSウイルスについて教えてください。
風邪を引き起こす微生物の80〜90%はウイルスです。さまざまなウイルスがありますが、中でもRSウイルスは、小さな子どもの風邪の原因となり、乳幼児における気管支炎や肺炎を引き起こすことで知られています。RSウイルスは、麻疹(はしか)ウイルス、ムンプス(おたふくかぜ)ウイルスなどと同じ仲間で、非常に感染力の強いウイルスです。おもちゃなどに付着した場合、4〜7時間くらい感染力があるといわれています。日本では主に乳幼児に感染します。通常は10〜12月にかけて流行が始まり、3〜5月まで続きます。接触や飛沫(ひまつ)を介して気道に感染し、2〜5日の潜伏期間の後、38〜39℃の発熱、鼻水、せきなどを発症します(発熱がないこともあります)。一般的には普通の風邪として感じられ、1〜2週間で症状が軽くなります。しかし、2歳以下の乳幼児ではしばしば細気管支炎、喘息(ぜんそく)様気管支炎、肺炎を発症します。特に6カ月以下の乳児では、呼吸困難のために入院となることもあります。麻疹、ムンプスと異なり一度の感染では十分な免疫は得られないため、何度も発症しますが、通常は再感染のたびに免疫がついて症状は軽くなっていきます。
治療、予防について教えてください。
治療は基本的には、呼吸器症状や脱水症状などに対する保存的な対症療法になります。ワクチンや抗RSウイルス薬はありません。肺炎などを起こした場合は酸素投与、痰(たん)の吸引、人工呼吸管理なども行われます。RSウイルスは接触と飛沫によって感染するため、小まめな手洗い、マスクの着用、十分な睡眠などが、風邪の場合と同様に重要です。また、消毒に弱く、石けん、消毒用アルコール、塩素系消毒薬などで感染力を失います。
RSウイルスと同様に小児の呼吸器感染症の原因の一つになっているウイルスにヒトメタニューモウイルスがあります。RSウイルスと遺伝子が似ており、症状も似ています。RSウイルス感染症は1歳以下に多いですが、ヒトメタニューモウイルス感染症は1〜2歳に多く、RSウイルスより少し遅れて初感染を受けます。冬から春にかけて流行しますが、日本での流行のピークは春です。RSウイルスやインフルエンザウイルスと重なって感染すると重症化する確率が高いと報告されています。