2013年2月27日水曜日

高齢者の肺炎


ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

肺炎で亡くなる高齢者が急増していると聞きますが。
 肺炎は日本人の死亡原因の第4位であり、近年増加傾向にあります。肺炎による死亡者数のうち、9割以上を65歳以上の高齢者が占めています。また、高齢者に限ると、肺炎は死亡原因の第1位となっています。高齢化社会が急速に進むわが国において、高齢者の肺炎の診断・治療・予防は重要な課題の一つです。
 高齢者の肺炎は、発熱などの自覚症状が軽くても、症状が進行している場合があり、診断が遅れがちになります。風邪程度の症状しか見られなくても肺炎になっていることが珍しくありません。また、再発を繰り返して治りにくく、心不全に陥る傾向があります。さらに、加齢に伴う免疫力の低下や心臓病、慢性呼吸器疾患、糖尿病などの基礎疾患との合併によって重症化しやすいです。
 嚥下(えんげ)機能や咳(せき)反射の低下が引き金になって起こる誤嚥(ごえん)性肺炎になりやすいのも、高齢者肺炎の特徴です。特に脳梗塞がある人は注意が必要です。高齢者では、口腔内に定着した少量の菌や胃液を、気が付かないうちに繰り返し気管に吸入してしまう、いわゆる不顕(ふけん)性の誤嚥が目立ちます。加齢に伴い、唾液の分泌量が低下し、本来口腔(こうくう)内にある細菌の代わりに病原性の細菌が増えてきます。それらが気管に吸入されることにより肺炎が起きやすくなるのです。

高齢者肺炎の予防について教えてください。
 肺炎は、抗生物質の投与、補液、酸素投与などで治療できますが、かからないようにすることが何よりも肝心です。予防法としては、手洗い、うがい、マスクの着用、栄養管理、合併症のコントロール、禁煙などが挙げられます。口腔内のケアも重要で、歯磨きなどで口の中の細菌を減らすことで、誤嚥しても肺炎を発症しにくくなります。
 食事を取るときは、少量ずつ時間をかけて、しっかり飲み込むことを意識しましょう。また、食後2時間くらいは胃からの逆流を防ぐため、すぐに横にならず、座った姿勢を保ちましょう。就寝中も、あおむけで平らに寝るよりも、リクライニングシートのように少し上半身を高くするのが良いです。
 肺炎球菌ワクチンの摂取も予防効果が期待されます。また、インフルエンザ予防接種と併用することで予防効果がさらに高まると考えられています。

2013年2月20日水曜日

歯周病の歴史


ゲスト/まるやまファミリー歯科 小川 拡成 院長

 今回は歯周病の歴史について触れようと思います。ヨーロッパでもアメリカでも日本でも歯周疾患といえば、虫歯と並ぶ歯科の二大疾患にもかかわらず、昔はこの病気は難治、不治の疾患で、究極の治療法は抜歯のほかにないと思われていました。
 しかし、アメリカは19世紀の終わりから20世紀の初めにかけて、見事にその治療や予防を可能にしました。そもそも、19世紀前半のヨーロッパでは、歯周疾患の原因については、局所説と全身説が入り乱れ、スケーリング(歯石取り)や手術、固定などの局所療法に努めてもすぐ再発するので、体質というような未知の全身因子があるのではないかと考えられていました。ですが、今から150年前の1867年、アメリカのリッグス氏が、この歯周疾患の特徴として、まず歯肉に炎症が起こり、次第に歯槽骨吸収が進行して歯の動揺が起こることを報告しました。また彼は局所療法の重要性を説き、スケーラーでポケット内の汚染された部分や炎症を起こした歯肉をかき取るばかりでなく、患者さんにブラッシング指導を行うことによって、大きな成果が得られることも併せて報告しました。それでこの歯周疾患は「リッグス病」と呼ばれましたが、彼が学会に加入しなかったことなどで、この名称は消えてしまいました。
 しかし、その考え方はその後の臨床へ大きな影響を与えました。また、細菌学の立場からメスを入れたのがミュラー氏でした。彼はドイツ系アメリカ人で、コッホの下で細菌学の研究に情熱を注ぎ、歯周疾患はどこにでもいる口腔常在菌の混合感染であるという考え方を明確にしました。つまり原因は口の中にいるばい菌ということです。このようにしてアメリカ東海岸付近では、ブラッシングやスケーリングを中心とした予防活動が日常的なものとなり、不治と言われた歯周疾患も自信をもって治癒に導けるようになりました。局所説が勝利を収めたのです。
 口の中のばい菌が歯周病の原因である以上、どのような時代がきてもヒトは歯ブラシを捨てることはできません。歯周病で悩んでいる皆さんは、今すぐお近くの歯医者さんでアドバイスを受けられることをお勧めします。

2013年2月13日水曜日

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と顎変形症


ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田 康人 院長

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と顎変形症の関係について教えてください。
 SASは、就寝中に筋肉が緩んで気道(呼吸をするときに空気が通る道)がふさがり、呼吸ができなくなる病気で、10秒以上の呼吸停止が一晩で30回以上、あるいは1時間に5回以上ある場合に診断されます。大きないびきが特徴で、中高年で肥満の男性がかかりやすいといわれています。熟睡感が得られない、昼間眠くて注意力に欠けるなどの症状があり、居眠り運転など重大な事故を引き起こす要因となることがあります。また、酸素不足や血圧上昇の繰り返しで心筋梗塞や脳卒中の発症につながる恐れもあります。
 SASの原因としては、肥満に伴う脂肪による気道の閉塞、気道に舌が落ち込んでいる、扁桃(へんとう)肥大、舌の肥大(巨舌症)のほか、下顎が小さいまたは後退している(小顎症、下顎後退症)など顎変形症が挙げられます。
 SASの治療には、鼻にマスクをして空気を送り気道を広げる、マウスピースを着けて下顎を前に出すようにして気道を広げる、手術で扁桃肥大などを除去するなどの方法がありますが、いずれも根本的な治療にはなりません。

顎変形症によるSASの治療法について教えてください。
 顎変形症には、反対咬(こう)合(受け口)、上顎前突(出っ歯)、開咬(上下の歯がかんでいない状態)、顎偏位(顔や顎が曲がった状態)などがあり、変形が大きい場合、矯正治療だけでは治しきれず、外科手術を行います。手術は全て口の中から行うので顔に傷が残ることはありません。また、矯正治療のみの場合は健康保険外の診療になりますが、外科手術を伴う場合は、手術と前後の矯正治療が保険の適用となります。
 下顎後退症は、文字通り下顎が後退していることで、横顔を見ると顎の部分が奥に引っ込んでいます。下顎が後ろにあるために気道が狭くなり、SASの発症につながりやすいと考えられます。症例によって、また専門医のアプローチによって治療はさまざまですが、基本的には下顎骨を口腔内から切断し、下顎骨を前方に移動する手術を行います。
 反対咬合の方は、比較的すすんで矯正治療を受けられますが、下顎後退症は気付きにくいため、そのままにしている方も多いようです。SASの危険性を避けるためにも、ぜひ一度専門医の診察を受けることをお勧めします。

2013年2月6日水曜日

せきぜんそく


ゲスト/医療法人社団碩心会北海道大野病院附属駅前クリニック 古口 健一 院長

せきぜんそくとはどのような病気ですか。
 風邪は治ったのに、何週間もせきが治まらない。そんな人はせきぜんそくになっているかもしれません。せきぜんそくは、ぜんそくの前段階といえる状態で、せきが慢性的に続きますが、ゼイゼイ・ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)がないのが特徴です。発熱や痰(たん)などの症状はほとんど出ません。季節の変わり目に出始めることが多く、夜中から明け方にせきが激しくなるほか、室内外の温度差や喫煙でせきが出やすくなります。
 一般的なぜんそくと同様、気道(呼吸をするときに空気が通る道)が狭くなり、いろいろな刺激に対して過敏になることで、炎症やせきの発作が起こります。花粉や動物の毛、ホコリやダニなどのハウスダストによるアレルギーが主な原因と考えられていますが、最近はストレスから発症するケースも多く、患者数は年々増加しています。比較的女性に多くみられ、しばしば再発を繰り返します。放っておくと約3割の患者さんがぜんそくに進んでしまうので、注意が必要です。目安として、風邪をひいた後に3週間以上せきが続くようなら、専門医で詳しく診てもらうことをお勧めします。

せきぜんそくの診断と治療について教えてください。
 せきぜんそくと紛らわしい疾患には気管支炎やアトピー咳嗽(がいそう)、百日咳などがあり、いずれも適切な治療を行わなければせきが長引く原因となります。また、長引くせきは肺がんや慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)、間質性肺炎などの重い疾患が原因となっている場合もあるので、たかがせきと軽視せず、専門検査を受けることが大切です。せきぜんそくが疑われる場合は、問診で病歴などを詳しく尋ねた上で、血液検査や肺機能検査、痰の検査などを行い、さまざまな症状から総合的に診断します。
 せきぜんそくに一般的なせき止め薬や風邪薬、抗生物質を用いても効果はありません。治療にはせきを抑えるための気管支拡張薬と、せきを引き起こす原因となっている気道の炎症を治すための吸入ステロイド薬を使います。せきが抑えられても、ぜんそくへ移行するのをしっかりと防ぐため、数カ月〜半年ほどは吸入ステロイド薬を使う必要があります。自己判断で薬を中止せずに、医師の指示通りに根気よく治療を続けることが重要です。

2013年1月30日水曜日

関節リウマチの治療


ゲスト/北海道内科リウマチ科病院 松橋 めぐみ 医師

関節リウマチの治療について教えてください。
 免疫の異常による関節の炎症で、腫れや痛みが起こり、進行すると骨が破壊し関節が変形してしまう関節リウマチです。治療は、症状や進み具合に合わせて、薬物療法、リハビリテーション、手術療法などが行われます。
 一度変形してしまった関節は、薬を使ったりリハビリを行ったりしても、元には戻せません。薬を飲んでも痛みが続く場合や、関節の機能が失われて日常生活に支障を来す場合などには、手術治療が勧められます。変形したり破壊され関節を人工関節に置き換える手術などがあります。
 関節リウマチの痛みや腫れは、薬で和らげることができますが、関節を動かさずにいると、骨や関節周囲にある筋肉、靭帯(じんたい)などの機能が落ちてしまいます。症状が出始めた初期のころから、適切なリハビリを行うことが大切です。リハビリには、患部を温めて痛みやこわばりを和らげる温熱療法、関節の動きを広げるなど、身体機能の保持・改善を目指す運動療法などがあります。
 現在、関節リウマチの治療の中心となっているのは薬物療法です。治療の進歩で、症状が落ち着き進行しない「寛解」も夢ではなくなりました。

薬物治療について教えてください。
 痛みや腫れを抑える消炎鎮痛剤のほかに、免疫系に作用する薬剤などを用いて治療します。標準的な治療薬は、メトトレキサート(MTX)です。日本では使用量が低く抑えられてきましたが、2011年2月から十分な量が処方可能となり、良好な治療成果をあげています。ただし、まれに間質性肺炎や肝機能障害などの副作用が出る場合もありますので、リウマチ専門医のもとで治療することが大事です。
 抗リウマチ薬だけで症状や関節の所見が十分に改善しない場合、新しい治療薬である生物学的製剤が使えるようになりました。炎症の原因となるサイトカインの働きを抑えるタイプに加え、免疫をつかさどる細胞の働きを抑えるタイプも登場し、選択肢が広がっています。即効性があり、痛みもコントロールできるなど効果は高いですが、高額な薬代が難点となっています。
 どの薬を選択するかは、症状や進行の程度、合併症の有無のほか、患者さんのライフスタイルなども考慮して決められます。患者さんも主治医や専門の先生とよく相談し、効果や副作用を十分理解しながら、治療を継続しやすい薬を選ぶことが大切です。

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