2013年2月13日水曜日

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と顎変形症


ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田 康人 院長

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と顎変形症の関係について教えてください。
 SASは、就寝中に筋肉が緩んで気道(呼吸をするときに空気が通る道)がふさがり、呼吸ができなくなる病気で、10秒以上の呼吸停止が一晩で30回以上、あるいは1時間に5回以上ある場合に診断されます。大きないびきが特徴で、中高年で肥満の男性がかかりやすいといわれています。熟睡感が得られない、昼間眠くて注意力に欠けるなどの症状があり、居眠り運転など重大な事故を引き起こす要因となることがあります。また、酸素不足や血圧上昇の繰り返しで心筋梗塞や脳卒中の発症につながる恐れもあります。
 SASの原因としては、肥満に伴う脂肪による気道の閉塞、気道に舌が落ち込んでいる、扁桃(へんとう)肥大、舌の肥大(巨舌症)のほか、下顎が小さいまたは後退している(小顎症、下顎後退症)など顎変形症が挙げられます。
 SASの治療には、鼻にマスクをして空気を送り気道を広げる、マウスピースを着けて下顎を前に出すようにして気道を広げる、手術で扁桃肥大などを除去するなどの方法がありますが、いずれも根本的な治療にはなりません。

顎変形症によるSASの治療法について教えてください。
 顎変形症には、反対咬(こう)合(受け口)、上顎前突(出っ歯)、開咬(上下の歯がかんでいない状態)、顎偏位(顔や顎が曲がった状態)などがあり、変形が大きい場合、矯正治療だけでは治しきれず、外科手術を行います。手術は全て口の中から行うので顔に傷が残ることはありません。また、矯正治療のみの場合は健康保険外の診療になりますが、外科手術を伴う場合は、手術と前後の矯正治療が保険の適用となります。
 下顎後退症は、文字通り下顎が後退していることで、横顔を見ると顎の部分が奥に引っ込んでいます。下顎が後ろにあるために気道が狭くなり、SASの発症につながりやすいと考えられます。症例によって、また専門医のアプローチによって治療はさまざまですが、基本的には下顎骨を口腔内から切断し、下顎骨を前方に移動する手術を行います。
 反対咬合の方は、比較的すすんで矯正治療を受けられますが、下顎後退症は気付きにくいため、そのままにしている方も多いようです。SASの危険性を避けるためにも、ぜひ一度専門医の診察を受けることをお勧めします。

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