2012年5月16日水曜日

思春期のメンタルヘルス


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 江川 浩司 診療部長


思春期のメンタルヘルスについて教えてください。
 思春期(おおむね10〜18歳の中高生)は、第二次性徴がみられ、心と体が子どもから大人へと変化・成長する時期です。一方で、心と身体のバランスが不安定になりやすく、さまざまな問題が生じやすい時期でもあります。
 情報過多の現代社会では、情報が複雑に操作され、何が正しく何が間違っているのか、大人でも判断が難しい状況です。情報の意味の伝わり方が必ずしも正確なものとはならない場合も多く、まだ心身ともに未熟な子どもにとっては誤解につながることも多いようです。迷いや不安、混乱や絶望など、そうした思いと常に向き合わざるを得ない子どもたちの精神的なストレスは相当なものです。爆発寸前までストレスを抱え込んでいるのに、うまく言葉にすることができなかったり、また、両親に心配を掛けてはいけないという思いから、なかなか自分の気持ちを伝えることが難しかったりします。

思春期の心の病気への対応について教えてください。
 思春期の問題行動としては、不登校が最も多く、引きこもりや自傷行為、自殺、性的非行などが挙げられます。一過性であることも多いのですが、その裏に精神疾患が隠れている場合もあります。近年、増加傾向にある不登校は、環境不適応などさまざまな要因で起こります。対人関係の困難、学習困難、いじめなどに起因したものや、広汎性発達障害を背景に持つものもみられます。解決、対応方法に一般論はありません。しかし、時間をかければ必ず改善、解決の糸口を見い出すことができます。
 心の病気は、脳の機能不全によって発生するものがほとんどです。つまり、誰にでも起こり得る、ごく普通の病気なのです。例えば、うつ病は風邪のようにありふれた病気であるという意味合いで、「心の風邪」という別名があるほどです。
 心の病気は治療が遅れるほどに、生活への障害が大きくなる傾向がある病気です。また思春期に始まった心の病気は、成人期まで続いたり、再発したりするケースが多いので、一層早期発見・早期治療が重要となります。
 子どもの日々の様子から、おかしな変化を感じられるようになったら、それは子どもが発している「SOS」の信号なのかもしれません。過剰に悲観的にならず、また自分たちだけで解決しようとせず、早めに専門医に相談することをお勧めします。

2012年5月9日水曜日

更年期障害について


ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長


更年期障害とはどのような病気ですか。
 30代後半〜40代前半になると、卵巣機能が徐々に低下し始め、50歳前後に「閉経(1年以上の無月経の状態)」を迎えます。閉経年齢が早いか遅いかは個人差があります。閉経をはさんだ前後10年を「更年期」といい、女性ホルモンの分泌量が急激に減少するために、月経異常やのぼせ、火照り、目まい、疲労感、不眠、憂うつ感など、さまざまな症状が出ます。この中で日常に差し支えるようなものを「更年期障害」といいます。
 更年期の女性は骨粗鬆(しょう)症にもかかりやすいとされます。骨粗鬆症による骨折は、脳血管障害に次いで高齢者が寝たきり状態になる原因の第2位となっているので注意が必要です。また、閉経後のコレステロールの上昇が原因で、血管の老化が進み、狭心症や心筋梗塞、脳の血行障害を起こすケースもみられます。
 20〜30代といった若い年代の女性が、一見更年期障害と同じような症状を発症することがありますが、これは真の更年期障害とはいえず、多くの場合ストレッサーが隠されています。ストレッサーとはストレスを与える刺激のことです。


更年期障害の検査・治療について教えてください。
 更年期障害は、身体的要因だけでなく、対人関係、家族の問題などの社会的・環境的要因が複雑に絡み合って起こるとされているので、検査は問診が重要となります。血中のホルモン量を調べるための血液検査や超音波検査なども行います。
 治療は、漢方薬と女性ホルモンを補充する薬物療法が基本となります。加齢とともに減少した女性ホルモンを補い、不足することにより現れる症状を軽減するのがホルモンの補充療法です。閉経以降に起こりやすくなる生活習慣病や骨粗鬆症、予防医学としてのアンチエイジングへの効果も期待されています。
 閉経は女性のライフサイクルの中で必ず起こるイベントであり、更年期は避けては通れない大事な時期です。更年期障害とどう向き合い、改善していくか。まずは一人一人が更年期医学についての正しい知識や情報を身に付ける必要があります。例えば、女性ホルモンの補充療法をどう捉えるかは、その人の考え方や人生観にもよりますが、自分でもしっかり勉強し、ある程度理解した上で、専門医に問い掛けていく姿勢も大切です。

2012年4月25日水曜日

親知らずと自家歯牙(しが)移植

ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

「親知らず」は、なぜ抜歯することが多いのですか。
 「親知らず」は、20歳以降、もっとも遅く形成される永久歯で、一番奥に生えてくる歯のことです。「親知らず」が生えてくる頃には、親がその歯を見る機会がないということから、この名が付いたといわれています。
 噛(か)み合わせに問題のない「親知らず」を無理に抜く必要はありません。しかし、「親知らず」は横や斜めに生えたり、生えきらなかったりすることがほとんどで、歯磨きが上手にできず、虫歯や歯茎の腫れを引き起こすなど口腔内のトラブルの原因になりがちです。親知らずのせいで噛み合わせが悪くなり、顎(がく)関節症になるケースもあります。
 親知らずの治療は、一番奥の歯なので治療器具が届きにくく、その後のメンテナンスも難しいので、治療をしたとしても高確率で再発します。そのため「親知らず」は、治療よりも抜歯をお勧めするケースが多くなるのです。

歯を失った場合、抜いた「親知らず」を移植する治療があると聞いたのですが。
 虫歯などで歯を失った場合、ブリッジや取り外し式の入れ歯、インプラントなどにより義歯で補う治療がありますが、「親知らず」を抜き、それを失った歯の部位に移植する治療もあり、これを自家歯牙移植といいます。移植する「親知らず」の根の状態が良いこと、移植場所の骨や歯肉の量が十分であること、「親知らず」と移植場所の大きさがある程度合致していることなどの条件がそろえば、生きた天然の歯を取り戻すことができる有効な治療法です。
 自家歯牙移植では、歯を移植した後に新しい骨が形成され、顎(あご)の骨にしっかりと定着します。メンテナンスを続けることで自分の歯として安定した状態を保つことができます。自分の歯であるため噛み心地がよく、他の歯に余分な負担も掛けません。もともと自分の体にあった歯を移植する点で、異物を使用しないという安心感もあります。
 自家歯牙移植は抜歯と移植を同時に行いますので、外科的処置において患者さんの負担がやや大きくなり、治療期間も移植してから噛めるようになるまで2〜3カ月必要です。費用は保険が適用されるケースが多いです。
 自家歯牙移植を検討されるのであれば、自分の「親知らず」がどういう状態なのか、将来移植に使用できるのかなど、まずは専門医に一度ご相談ください。

2012年4月18日水曜日

遺糞(いふん)症

ゲスト/札幌いしやまクリニック 樽見 研 医師

遺糞症とはどのような病気ですか。
 遺糞症とは4歳ぐらいから学童期の排せつ機能が自立すべき年代での排せつ障害で、トイレではなく下着の中や床の上など、本来排便してはいけない場所や状況で排便をしてしまうことをいいます。国際的な診断基準では、4歳以上になっても不適切な場所での排便を月に1回以上認め、それを3カ月以上繰り返す状態と定義されています。
 遺糞症の原因としては、慢性的な便秘のほか心理的ストレスが挙げられますが、一般的には便秘を伴うことが多いです。便秘を放置すると排便時に苦痛を感じて排便を我慢するようになります。あるいは、遊びに夢中になるなどして便意を我慢することを続けます。その結果、排便反射が弱くなり、便意を感じにくくなっているため、気付かないうちに便を漏らしてしまうのです。また、肛門を締める筋肉の機能が低下している場合もあります。
 子どもに便秘が起こる原因としては、排便時に緊張して便が出にくくなることや、排便時に肛門を傷つけてしまい、痛みを感じた経験から排便に恐れを持つことなどが考えられます。また、幼稚園への入園、小学校への入学など環境の変化やトイレに行きたくないなどのストレスがきっかけとなって、便秘や遺糞症が起こることも多いです。

遺糞症の治療について教えてください。
 便秘が遺糞症の原因となっている場合には、下剤やかん腸を用いて直腸にたまった便を排せつさせます。一方、子どもの生活習慣の改善も大切で、治療の基本は排便のリズムを取り戻させることになります。毎朝食事をしたら排便を行うといった排便習慣を付けさせることによって、規則的な排便を促します。
 直腸に便をためないようにしていると、次第に直腸の排便反射が戻ってきて、1日分の便量で便意を感じるようになり、自分で排便ができるようになります。1回の治療・指導で可能な子もいれば、数カ月かかる子もいます。
 また、家族など周囲の人間は、子どもが便を漏らしたからといって、いきなり叱りつけてしまうと、かえって逆効果になります。叱らず、焦らず、様子を見ながら排便を促すようにしましょう。子どもが余計なプレッシャーを感じないようにしてあげることが大切です。幼いころのトイレトレーニングの不足、早すぎるトイレトレーニングは、子どもに過度のストレスを与えてしまうケースもありますので注意が必要です。

2012年4月11日水曜日

最新の糖尿病治療薬

ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。
 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬です。糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1cを下げる効力は1.0%前後。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬のHbA1cを下げる効力は1.6%前後。現在は1日1回の注射が必要ですが、将来的には1週間に1回で済む注射薬も出る予定です。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。
 一方、インスリン注射薬に眼を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は、持続型インスリンと超速効型インスリンの合剤ですが、超速効型インスリンの含有率が50%〜70%の製剤が最近使用できるようになりました。食後血糖の高い症例を治療するのに便利なインスリンです。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療が良好といえる目安はHbA1cが6.5%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は130/80mmHg以下です。自宅で簡易血圧測定器を使用して治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞などの予防にもつながります。

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