<高齢者の不眠について教えてください>
高齢になると、不眠に悩む方が増えてきます。高齢者は若年成人と比べて眠りが浅くなり、途中で目が覚めやすくなるため、布団に入っている時間のうち実際に眠っている時間の割合(睡眠効率)が低下しやすくなります。
その他に高齢者の不眠の原因としては、身体活動の減少、昼寝の増加、体の病気による痛み・呼吸困難・かゆみ・頻尿、服用している薬の影響、そして精神疾患などが挙げられます。
一方、不眠が続くと、糖尿病や高血圧、心臓の病気、うつ病を引き起こしたり、悪化させたりするなど、心身に悪影響を及ぼすことも知られています。厚生労働省がまとめた「健康づくりのための睡眠ガイド」では、1日8時間以上は横にならないことが推奨されています。寝つきが悪いという方は、もしかすると横になる時間が早すぎるのかもしれません。高齢になると早寝早起きの傾向が強まりがちですが、寝つきが悪い時には、無理に早く寝ようとせず、眠気が生じるまで横になる時間を遅らせるのがよいでしょう。また、テレビやラジオをつけながら布団やベッドで過ごすこともできるだけ避けてください。昼と夜のメリハリをつけるために、極力昼寝をすることも避け、ウオーキングなど適度な運動などを行うことが望まれます。
<高齢者の不眠に対してどのような薬を処方されるのでしょうか>
不眠の改善のためには、原因に対する対処が重要です。たとえば、かゆみで寝られない場合には皮膚科の治療を受けたり、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合にはその治療を行ったりすることが大切です。
また、「横になりすぎない」「定期的に運動を行う」などの工夫を行っても、不眠が改善されない場合には睡眠薬の使用も検討します。睡眠薬の中では「ベンゾジアゼピン受容体作動薬」が長く使用されていますが、依存性や転倒などのリスクがあります。近年は、それらのリスクが少ない「メラトニン受容体作動薬」や「オレキシン受容体作動薬」が使われることが増えています。また、抗うつ薬や漢方薬などを使用することもあります。睡眠薬の種類や服用の仕方について不安のある方は、自己判断で内服を中止することはせずに、一度かかりつけ医に相談してみるのがいいでしょう。
睡眠を改善するためにどのような工夫をすればよいのかわからない場合や、生活習慣の工夫などをしてもなかなか不眠が改善しない場合には、精神科・心療内科にぜひご相談ください。
医療法人社団
正心会 岡本病院
井上 佳祐 医師