<目や見え方の不調に現れる身体の病気のサインについて教えてください>
目は心の窓、全身を映す鏡、という言葉があります。誰しも目の疲れやかすみなどは経験しますが、こうした不調の中には重篤な目の病気や、全身の病気のサインとして表れているものがあります。
例えば、目のかすみやまぶしさは、ドライアイや「VDT症候群(パソコンなどのディスプレイを使った長時間の作業により目や身体、心に影響の出る病気、別名・IT眼症)」のほか、白内障や緑内障、目の中で炎症が起こる「ぶどう膜炎」の代表的な症状です。また、直線がゆがんで見える場合、網膜の中心にある黄斑に薄い膜ができる「網膜前膜」、ストレスなどで黄斑に水がたまる「中心性漿液(しょうえき)性網脈絡膜症」、加齢によって黄斑に障害が出て、高齢者の失明の要因の一つになっている「加齢黄斑変性症」などが疑われます。片方の目だけかすんだり、視野が欠けたり、まぶたが下がる、開きにくいといった症状は、糖尿病や動脈硬化、脳梗塞や脳腫瘍など脳の病気のほか、全身の筋力が低下する難病「重症筋無力症」でも起こるので注意が必要です。また、膠原病ではぶどう膜炎やドライアイが、甲状腺疾患では眼球が前に突出することもあります。
車を運転していて「うっかり赤信号を見落としそうになった」「突然、車が飛び出してヒヤッとした」、このような経験をされたことはないでしょうか。もしかしたら、原因は不注意ではなく、目の病気で視野が狭くなっているためなのかもしれません。最近、国土交通省がバスやトラックなどの運転手2300人あまりに眼科の検診を行ったところ、視野に影響が出る緑内障やその疑いなどと診断された人が全体のおよそ1割いたことが分かりました。運転免許の取得や更新の際には、視力検査を行いますが、視力が一定以上あれば視野検査は行いません。視野の異常はとにかく自覚症状──不調のサインのないことが特徴です。視力には自信があると思っていても、視野には知らないうちに異常が起きているかもしれません。安全運転を続けるためにも、症状がなくても定期的に眼科で視野に影響が出る病気はないか、見え方は正常なのかを調べてほしいと思います。
ふじた眼科クリニック
藤田 南都也 院長