2024年6月28日金曜日

飛蚊(ひぶん)症

 <飛蚊症とはどのような病気ですか>


 白い壁や青空を見ていると、視界の中で、糸くずや点、蚊や輪のような黒い影、物体が飛んでいるように見えることがありませんか? 暗い場所では見えず、明るい場所ではその浮遊物が、視線を動かすと一緒に動いてくる─これが飛蚊症です。

 眼球内の硝子体(しょうしたい)に何らかの原因で濁りが生じ、明るいところを見たときに濁りの影が網膜に映るために起こります。濁りの原因には、生理的な現象によるものと、病的なものがあります。

 飛蚊症の原因として最も多いのは、硝子体が網膜からゆっくり剥がれる「後部硝子体剥離」です。これは加齢による変化で、誰にでも起こる可能性があります。強い近視があると、若い世代でもこの変化が起こりやすいとされます。また、透明なゲル状の組織である硝子体が加齢などが原因で濁ってしまう「硝子体混濁」も飛蚊症を引き起こします。これらの状態は皆生理的なものなので、特に治療する必要はなく経過を見ます。しばらくすると飛蚊症の見え方に慣れて、気にならなくなることが多いです。


<別の病気が原因となっている飛蚊症について教えてください>


 網膜に孔があく「網膜裂孔」があると、網膜が浮き上がった状態になる「網膜剥離」を起こすことがあります。網膜剥離が生じると、飛蚊症のほか視野欠損や視力低下といった症状が出現します。進行したまま放置すると失明に至ることもあるので、早急の治療が必要です。網膜裂孔はレーザー治療、網膜剥離は手術が一般的です。

 動脈硬化や高血圧が原因で網膜の静脈血管が閉塞(へいそく)することで、血液の流れが滞り、網膜に出血やむくみが起こる「網膜静脈閉塞症」でも、飛蚊症を起こすことがあります。治療は、網膜光凝固や眼球に直接「抗VEGF薬」を投与する硝子体注射があります。眼科治療と並行して動脈硬化や高血圧の治療・管理・改善も重要です。

 糖尿病による「硝子体出血」では、網膜の中心・黄斑部に水がたまります。また、硝子体内に血液が入り込み、飛蚊症と感じることがあります。治療は内服薬で引かない時、光凝固や抗VEGF薬の硝子体注射、場合により手術が必要になります。糖尿病の治療や管理も重要です。

 飛蚊症が生理的なものか、病的なものかを本人が自覚症状で区別することは困難です。飛蚊症を感じたら、早めに眼科で検査を受けることが大切です。



ふじた眼科クリニック
藤田 南都也 院長

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