<思春期に多い睡眠障害について教えてください>
思春期の中高生に多い睡眠障害として「睡眠相後退症候群」があります。社会の夜型化と共に近年増加傾向にあります。
睡眠相後退症候群は、通常の時間に入眠できず、明け方4時〜5時ごろ入眠し、昼ごろに覚醒するという睡眠覚醒リズムを努力しても改善できずに1カ月以上続きます。
深夜までインターネットのゲームや動画視聴を行ったり、「フェイスブック」や「X(旧ツィッター)」「インスタグラム」など交流サイト(SNS)を利用したりすることがきっかけとなるケースが多いです。
無理に起こそうとすると暴力的になることもあります。睡眠覚醒リズムが社会生活のスケジュールと合わず、朝起きられないため、遅刻や欠席が常態化し、不登校やひきこもりの原因となります。その結果、自信を喪失したり、抑うつや不安などの精神障害を呈したりする場合もあり、長期化するケースも目立ちます。
<質の高い眠りの重要性について教えてください>
眠りの質は睡眠初期のノンレム睡眠、特に深睡眠が左右します。深睡眠には、脳の休養や脳の過熱を防ぐための体温下降、免疫機能増加などの役割があります。また、深睡眠時に分泌される成長ホルモンは、身体と脳を成長させ、情緒も安定させます。深睡眠を十分に取るには、午後10時〜午前4時に眠っていることが必要であり、睡眠相後退症候群では深睡眠が短くなるため成長ホルモンの分泌が減少し、脳の発達に悪い影響を与えるリスクが生じます。情緒が不安定になりやすく、「キレやすい子」になったり、学業成績や運動能力にも影響を及ぼします。
睡眠相後退症候群は予防が大切です。親は子どもに正しい睡眠を取らせることが重要です。朝は午前7時までに起床し、朝食は午前8時までに取るようにしましょう。適度な運動も夜間の睡眠を促進します。夕食は寝る3時間前まで取るようにし、午後9時以降はスマホなどのデジタル端末は使用しないことが推奨されます。午後9時〜午前0時の間に入床するのが理想です。休日も同じリズムで過ごしましょう。
治療は、上記のような生活指導と睡眠を促す薬剤の投与などを行います。専門施設では、起床時に日光や明るい光を放つ機器を使う「高照度光療法」や、入眠時間を数時間ずつ遅らせるなどして調整していく「時間療法」なども行われます。
医療法人 耕仁会
札幌太田病院
太田 健介 院長