2022年11月17日木曜日

ピロリ菌除菌後胃がん

 福住内科クリニック 佐藤 康裕 院長


ピロリ菌の除菌治療をした後も、胃内視鏡(胃カメラ)検査を受ける必要はありますか?


 除菌後も定期的な胃カメラ検査が必要です。ピロリ菌は胃がんの原因であり、胃がん予防のための除菌治療はとても重要です。しかし、予防といっても胃がんを完全に防げるわけではありません。除菌に成功すると、胃がん発症の危険性が全体としては3分の1程度に低下しますが、ピロリ菌に感染したことがない人と比較すると発症リスクはかなり高いことが分かっています。日本ではこれまでに1000万人以上が除菌治療を受けていますが、除菌後は胃がんにならないと思い込んで胃がん検診などを受けないケースがあり問題となっています。実際に、除菌後に胃がんが進行した状態で見つかる例も少なくないです。

 ピロリ菌は主に乳幼児期に口から入り込み、胃の中に持続感染し粘膜に炎症を引き起こします。成人後に感染することはほとんどありません。多くの場合、無症状のまま慢性炎症が続き、次第に「萎縮性胃炎」という状態になります。数十年を経て、萎縮性胃炎が進行し胃がん発症のリスクが高まっていきます。

 30歳くらいまでに除菌すると、胃がんの発症予防効果が高いです。年齢が高くなると萎縮性胃炎が進み、ピロリ菌がいなくなっても胃の状態は元には戻らないため、除菌による発症予防効果は小さくなります。ピロリ菌に感染しても多くの人は自覚症状が出ないので、検査の機会を積極的につくり、なるべく若いうちに除菌治療を行うことをお勧めします。

 ピロリ菌に感染している人の割合は徐々に減少してきていますが、現在、日本人のピロリ菌感染者数は約3000万人と推計されています。まずは感染者の拾い上げが重要です。検査でピロリ菌に感染したことがないと判定されれば、生涯を通じて胃がん発症のリスクは低いです。一方、感染が判明した場合は胃がんの発症リスクを減らすため除菌治療を推奨しています。繰り返しになりますが、たとえ除菌をしても、もともと感染がない人に比べれば胃がんのリスクは高いので、除菌後こそ定期的な検査が必要です。除菌後に発症する胃がんは、周囲粘膜との境界が不明瞭で発見しにくいという特徴があるので、バリウム検査よりも精度の高い胃カメラ検査を受けることをお勧めします。年に1回程度の頻度で受ければ、早期発見が可能で、おなかを切らずに内視鏡で治療できる場合もあります。

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