2022年11月10日木曜日

ひきこもり

  ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 新井博達 公認心理師


ひきこもりについて教えてください。

 厚生労働省の研究事業で示された「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」(主任研究者・齊藤万比古ほか 国立国際医療研究センター国府台病院 2010)のなかでは、ひきこもりは「さまざまな要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6カ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)」と定義されています。

 ひきこもりという用語は病名ではなく、社会との関係の中で生じる現象を表すものです。すべてのひきこもり状態の人が、社会的支援や治療を必要としているわけではありません。一方で、生活上で何らかの困難や精神疾患を有する方も多くいます。近年はひきこもりの長期化に伴い、本人とその親が高齢化する「8050問題」が深刻化し、80代の親が50代の子を支えるような状況で社会的孤立や生活困窮に陥る懸念が生じています。


ひきこもりへの向き合い方や支援について教えてください。

 ひきこもり状態に本人が罪悪感を抱くことは少なくありません。しかし、ひきこもりは何らかの事情により誰にでも起こりうる状態で、責められることではありません。強い自責の念でかえって回復が遅れることもあります。また、生き方は多様であり、必ずしも就労を人生のゴールにする必要はありません。まずは、ささいなことでも良いので、本人が生活の中で楽しめることを探すことが大切です。対応に戸惑いを持つ家族もいらっしゃると思いますが、“家族自身”の生活が充実することで気持ちにゆとりができ、本人の回復にもつながります。家族向けの支援では、①家族自身の負担軽減、②家族が本人への関わり方を学び良好な関係を築くこと、③本人が相談機関の利用や社会参加につながることを目指した「CRAFT(クラフト:コミュニティ強化と家族訓練)」というプログラムが有効な場合があります。

 ひきこもりの支援機関には、ひきこもり地域支援センター、精神保健福祉センター、保健所などの市町村の担当部門、精神科・心療内科・小児科などの医療機関、児童相談所、当事者団体や家族会、NPOなどの民間の支援団体があります。支援の内容は、生活相談、精神的治療、居場所支援、教育活動、就労支援などです。本人の来談が難しい時は、家族向けの相談やオンライン相談、家庭への訪問支援を行っている場合もあります。

 本人や家族だけで問題を抱える必要はありません。気になることは行政の窓口や各機関に問い合わせてみましょう。本人も家族もより安心して、自分らしい生活を送るために地域の関係機関を利用していただきたいと思います。

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