2022年6月8日水曜日

人工膝関節単顆置換術

 ゲスト/医療法人知仁会 八木整形外科病院 小野寺 純 医師


膝の痛みの原因と治療について教えてください。 

 中高年以降に多い膝の病気の一つに「変形性膝関節症」があります。膝関節の中で表面を覆っている軟骨が、老化やけがなどですり減ることで発症します。痛みだけでなく、膝の形が変わってしまい、進行すると日常生活にも支障が出てきます。

 薬(消炎鎮痛剤、ヒアルロン酸の関節内注射など)や装具(サポーター、足底板など)による保存治療を続けても痛みが改善しない場合、日常生活に支障が出たり、趣味やスポーツなどやりたいことができなくなったりした時、手術療法が考慮されます。

 代表的な手術として「骨切り術」と「人工膝関節置換術」があり、年齢や症状、生活状況に応じて使い分けます。一般的には、症状が初期から中期であれば骨切り術、末期であれば人工膝関節置換術を、また、若い人には骨切り術、高齢者には人工膝関節置換術を勧めるケースが多いです。

 人工膝関節置換術は、傷んだ関節の骨と軟骨を取り除き、人工関節に置き換える手術で、術後はほぼすべてのケースで痛みが消え去ります。膝関節の表面すべてを人工関節に換える「全置換術」と、悪くなった一部分だけを換える「単顆置換術」があります。


人工膝関節単顆置換術とは、どのような手術ですか。

 膝関節の軟骨のすり減りはほとんどの場合、内・外側の片方から生じます(日本人はO脚が多いので主に内側)。軟骨の損傷が内側もしくは外側だけに限定されている膝に対して、部分入れ歯のように傷んだ箇所だけを人工関節に置き換える手術が単顆置換術です。全置換術に比べ、手術による傷が小さく、出血量も骨を削る量も少なく、リハビリによる回復速度も早いです。早期退院・社会復帰が見込めるだけでなく、術後の関節の動きもより自然に近いです。ただし、靭帯の損傷がないことや、反対側の軟骨が正常であることなどの条件があり、すべての症例に単顆置換術が行えるわけではありません。

 長寿社会を迎え、これまで以上に人工関節を必要とする患者さんが増えると予想されます。メリットの多い単顆置換術ですが、軟骨のすり減りが内側を超えて膝全体に広がると全置換術しかできなくなります。保存治療や骨切り術なども含めた上で、適切な時期に最適な治療を受けることが大切です。膝に痛みや違和感を感じている方、我慢・放置せずに早めに整形外科を受診してください。


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