2022年6月15日水曜日

AI(人工知能)技術を用いた内視鏡検査

 ゲスト/福住内科クリニック 佐藤 康裕 院長


内視鏡検査へのAI導入について教えてください。

 暮らしを便利で快適にするAI技術は、私たちの生活に浸透し役割を広げつつあります。医療現場においてもAI技術を導入することでより正確な診断や判断が可能になり、医療の業務負担の軽減に役立つことが期待されています。なかでも顔認証などにも使われる<画像認識>はAIの得意分野であり、内視鏡やレントゲンなどの画像診断にAIは特に有効活用できると考えられています。

 すでに実用化されているのが、大腸内視鏡検査中にリアルタイムで病変を検出・診断するシステムで、2019年に「AI医療機器」として初めて国の承認を受け、日常診療にも導入されつつあります。大腸がんは近年、増加しているがんの一つで、がんの中で罹患者数第1位、死亡者数第2位となっていますが、早期に発見し、適切な治療を受ければ治癒させられる可能性が高いがんです。それだけに早期の発見が重要であり、AI内視鏡によって検査精度がさらに高まることが期待されます。


AIを用いた内視鏡検査の実際について教えてください。

 当院でも21年からAI内視鏡を導入し、大腸内視鏡検査全例に使用しています。カメラの操作は従来と同じですべて医師が行い、検査時間など患者さんの負担は何も変わりません。AIの1つ目の機能は、病変が疑われる箇所を見つけると画面上に枠で囲んで表示し、検出音を鳴らして医師に知らせるものです。大腸の病変は見つけにくいものもあり、専門医であっても100%検出できるとはいえないので、AIとのダブルチェックで精度を高めます。

 AIの2つ目の機能は、ポリープなどの病変について「がんにならない/治療の必要がない病変」か、「治療が必要な腫瘍性の病変」かを鑑別し画面に表示することです。大腸ポリープはすべてを切除する必要があるわけではなく、病変ごとに正確に判断し過不足なく治療することが重要です。ほとんどのケースで医師とAIの診断は一致しますが、こちらもダブルチェックで精度を高めます。

 最終的な診断・判断は医師が行うので、現状ではAIは医師の業務が円滑に進むよう支える「アシスタント」だと考えています。しかし、AIには疲労や老化がなく、アップデートを繰り返し進歩していきますので、街中が完全自動運転車ばかりになるような未来にはAIと医師の関係性も変化しているかもしれません。

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