2021年9月1日水曜日

コロナ禍でのがん検診の現況

 ゲスト/福住内科クリニック 佐藤 康裕 院長


コロナ禍におけるがん検診の受診状況について教えてください。

 2020年1〜12月のがん検診受診者数が前年と比べ3割ほど減少したとの報道がありました。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う検診の中止や受診控えが原因とみられ、日本対がん協会の調査によると最大2100人程度ががんを発見されなかった恐れがあると推計されています。

 新型コロナウイルス感染症の死亡者数は、昨年は約3500人でしたが、21年は6月末までの半年間で11000人以上と増加しています。一方で、われわれの脅威となる病気は新型コロナだけではありません。わが国のがん死亡者数は年間38万人を超え、死亡原因の第1位です。毎年新たにがんと診断される人は100万人以上いますが、そのうちの5人に1人が検診によって発見されています。

 早期がんはほぼ無症状であり、症状が出る頃には進行がんであることがほとんどです。がんは進行の程度によって治療成績が大きく異なり、例えば胃がんではステージ1期と4期の5年相対生存率は97.2%と7.1%であり大きな差がみられます。早期に見つかれば多くは治癒が期待できます。

 新型コロナの早期収束を目指していく必要がありますが、流行の状況を見ながら、がん検診の遅れを最小限にしていく必要もあります。一時検診を休止していたほとんどの医療機関も感染対策を行った上でがん検診を再開しています。


がん検診とはどのような検査なのですか。

 検診とは、ある特定の病気にかかっているかどうかを調べるために検査を行い、早期に発見し治療する事を目的とするもので「がん検診」が代表例です。がん検診は地域や職場が公的補助を出して行う「対策型検診」と、人間ドックなどほぼ自己負担で行う「任意型検診」があります。「対策型検診」は胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんの5種に対して行われています。これらのがんは日本での頻度が高く、安全で精度の高い検査法があり、早期治療の効果が高いことから検診が勧められています。

 日本のがん検診受診率はもともと高くなく、例えば乳がん検診ではアメリカ85%、イギリス78%、韓国52%、日本42%と諸外国に比べ低率です。医療へのアクセスが良い日本なのでもっと受診率を上げることは可能だと思います。ワクチン接種が終わった人が、次にすべきことは昨年忘れていたがん検診ではないでしょうか。

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