2021年9月15日水曜日

認知症

 ゲスト/医療法人北仁会 いしばし病院 藤本 純 副院長


認知症について教えてください。

 記憶や判断など脳の知的な能力を「認知機能」といいます。認知症とは、何らかの原因で脳細胞が障害を受け、生活に支障をきたしている状態のことを指します。認知症は人口の高齢化に伴って増え続け、現在国内で500万人以上、65歳以上の4人に1人は認知症か、認知症の一歩手前の状態とされる軽度認知障害(MCI)といわれています。

 認知症にはさまざまな種類があります。最も多い認知症は「アルツハイマー型認知症」で、全体の6〜7割程度を占めています。病初期に目立つ症状は記憶力の低下で、特に新しい記憶が障害されます。そのほか、脳梗塞などが原因の「脳血管性認知症」、実際にはそこにないものが見える幻視や、手足のふるえなどパーキンソン病のような症状がみられる「レビー小体型認知症」、性格や人格の変化が特徴的な「前頭葉側頭葉変性型認知症」が代表的な認知症です。

 また“治せる認知症”として知られるのが、認知症のような症状が出る「正常圧水頭症」です。脳内の脳室と呼ばれる場所に髄液が過剰にたまる病気で、適切な治療をすれば症状が改善する人が多く、ほかの認知症との違いについて啓発を進める必要があります。


診断や治療について教えてください。

 認知症の診断で重要なのは、認知機能の低下が認知症によるものかどうかを判断すること、そして、認知症であることが明らかであれば、その原因疾患をきちんと鑑別することです。通常、医師の問診やスクリーニング検査、描画テスト、CTやMRI、放射線を含んだ薬剤を注射し、脳の血流量の変化を調べるSPECTといった脳画像検査の結果などを総合的にみて見当をつけていきます。

 認知症の原因となる脳病変の進行を止めたり遅くしたりする根本的な治療薬は、先日アデュカヌマブというアルツハイマーの原因とされているアミロイドβを減少させる新薬が米国で承認されました。しかし本邦での承認はまだされておらず、今後の動向に注目です。しかしこれも初期段階での使用を想定しており、早期の発見がより重要になってきます。

 早期発見には、家族や周囲の方の直感に勝るものはありません。「おや?」と思ったら、すぐに受診につなげることが大切です。

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