2021年7月28日水曜日

受動喫煙の害

 ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 院長


受動喫煙の害について教えてください。

 タバコの煙には、タバコを吸う人が直接吸い込む「主流煙」、吸って吐き出した「呼出煙」、また、火のついた先から立ち上る「副流煙」があります。喫煙者の周囲(空気中)には呼出煙と副流煙が混ざって漂いますが、そういった煙を自分の意思とは関係なく吸い込んでしまうことを「受動喫煙」といいます。

 タバコの煙には、200種類もの有害物質が含まれており、そのうち約70種類は発がん性の物質といわれています。問題になるのは喫煙者が吸い込む主流煙よりも、タバコの先から立ち上る副流煙の方です。主流煙は吸う時に800℃もの高温になるため、有害物質は燃焼されやすくなります。一方、副流煙は低温のため主流煙よりも煙の中にずっと多くの有害物質が残るとされます。主流煙を1とした場合、副流煙にはニコチンが2.8倍、タールが3.4倍、一酸化炭素が4.7倍も多く含まれます。

 ニコチンは神経毒性を持ち、血管を収縮させて血圧を上げます。また、依存性もあります。タールは、タバコの成分が熱で分解されてできる粘着性の物質で、ベンゼンなど多くの発がん性物質が含まれます。一酸化炭素は、タバコが不完全燃焼した時に発生する物質で、血液中で酸素よりも先にヘモグロビンと結合し、酸欠状態を引き起こします。また、血液中のコレステロールを酸化させ、動脈硬化を進行させます。

 受動喫煙にさらされると、がんや脳卒中、虚血性心疾患、呼吸器疾患などのさまざまな病気のリスクが高くなり、妊婦や赤ちゃんにも悪影響を及ぼすことが分かっています。受動喫煙との関連が確実とされる「肺がん」「虚血性心疾患」「脳卒中」「乳幼児突然死症候群」の4疾患について、わが国では年間約1万5千人が受動喫煙で死亡していると推計されています。

 タバコに含まれる有害物質や発がん物質は、喫煙者本人の健康を害するだけでなく、家族や友人、職場の同僚など身近な人の健康も脅かします。わが国の屋内での喫煙規制は遅れており、中途半端な分煙をしている店では、禁煙席であっても汚染が環境基準を大きく上回る場合が少なくありません。世界では「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」に示されているように、受動喫煙の健康被害は明白なものとして、分煙ではなく全面禁煙化が進んでいます。


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