2021年7月7日水曜日

新型コロナによる消化器症状

 ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 院長


新型コロナウイルスに感染するとどのような症状がでますか。

 現在、世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、軽症時には味覚・嗅覚障害や発熱、せき、鼻汁、咽頭痛などのいわゆる感冒症状を呈しますが、重症化すると肺炎を発症し呼吸不全から死に至ることもあります。呼吸器系以外にもさまざまな症状を引き起こすことが知られていますが、その中でも消化器症状は15~50%と高い頻度で認められます。主な症状は下痢、腹痛、吐き気・嘔吐、食欲不振などであり、特に下痢はCOVID-19患者の約40%にみられたという報告もあります。また、肝臓やすい臓に障害を引き起こすこともいわれています。

 発熱やせき、たんといった呼吸器系の症状と下痢などの消化器症状を同時に起こすケースが多くみられますが、消化器症状だけで来院しCOVID-19と診断された例も約3%あったと報告されています。

 COVID-19による消化器症状と、ほかのウイルスや細菌などによって引き起こされる消化器症状は、COVID-19感染を知るPCR検査や抗原検査以外で見分けることができません。そのため、下痢などの消化器症状が出現したときには以下の点に注意することが重要です。まず、排泄物や嘔吐物には病原体が多く含まれており、周囲の人への感染を拡げる原因となるので、それらを処理する際には手袋・マスクを着用し、手袋を外した後には石けんでの手洗いを徹底してください。次に、COVID-19の流行状況、周囲の感染者の有無、そして自身に消化器系以外の症状があるかを総合的に考えて、医療機関への相談や受診をできるだけ早目に検討することです。例えば、下痢症状がある場合ですが、COVID-19が特に流行している時期に、周囲に感染者がいて、せきなどの感冒症状もあるとなればCOVID-19が疑われる可能性が高いです。一方で、感染の流行が落ち着いている時期に、周囲に感染者がおらず、下痢以外の症状もないときなどは、COVID-19の可能性は低いと考えられます。

 COVID-19では、消化器症状が生じることは決してまれではありません。住んでいる地域での感染の流行状況や周囲の感染者の有無、呼吸器症状の合併などから総合的に判断していくことが重要です。最後に感染予防についてですが、マスクの着用と手洗い・手指衛生・うがいの励行など、基本的なことを徹底するのが何よりも大切です。


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