2021年7月14日水曜日

ブルーライトカット眼鏡の小児への悪影響

 ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 院長


近年急速に普及しているブルーライトカット眼鏡は、子どもの目にどのような影響を与えるのですか。

 ヒトの目に見える光(可視光)は赤や緑、青などの波長の異なる光からなります。ブルーライトとは、パソコンやスマートフォンなどのデジタル端末の画面などから出る波長が短い青い光のことで、太陽光にも含まれています。この光を遮ることで、目の疲れや眼球の障害を防ぐなどとうたうブルーライトカット眼鏡が市販され、子ども用の商品も多く販売されています。

 ブルーライトカット眼鏡をめぐっては、大手メーカーが3月、約9,000人分を東京都渋谷区の小中学生に寄贈すると発表しました。これに対し今年4月、日本眼科学会や日本眼科医会などの6団体がブルーライト眼鏡について「子どもに推奨する根拠はなく、むしろ発育に悪影響を与えかねない」とする意見書を発表した。結果、計画が中止されるという騒動も起きました。

 日本眼科学会などの見解によると「液晶画面のブルーライトは曇り空や窓越しの自然光よりも光線量が少なく、網膜に障害を生じることはないレベルで、いたずらに恐れる必要はない」「子どもにとって、十分な太陽光を浴びない場合、近視進行のリスクが高まる。ブルーライトカット眼鏡の使用は、ブルーライトを浴びるよりもむしろ有害である可能性が否定できない」などと、する米眼科アカデミーなど国内外6本の研究成果を紹介。かみ砕いて説明すると、デジタル機器のブルーライトは網膜に障害を与えるほど強くなく、太陽光をカットすると、むしろ近視が進行するリスクが高まること。そのため、ブルーライトカット眼鏡を子どもが日中にかけることは、発育に悪影響を与える可能性があることが指摘され、小児への使用を推奨する根拠はないと結論付けています。つまり、小児への使用は「百害あって一利なし」といえます。

 子どもが深夜に長時間デジタル機器を使うことは好ましくなく、また日本眼科医会はデジタル機器からは30㎝以上目を離すことや、30分に1回は20秒以上遠くを見て目を休ませるを推奨しています。

 ブルーライトという言葉はよく知られるようになってきましたが、科学的根拠は一般の人には十分に知られていません。コロナ禍でオンライン授業の機会が増えるなど、子どもがデジタル端末を使用する機会は増えています。子どもの成長と目の健康を守るために、現時点で分かっている正しい情報を知ってほしいと思います。


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