2021年4月7日水曜日

リウマチなどの診療におけるWoCBA(ウォクバ)患者さんの治療

 ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 古崎 章 副院長


WoCBAとは何ですか。どういう意味を持つのでしょうか。

 「WoCBA(ウォクバ)」とは聞き慣れない言葉ですが、「Women of Child-Bearing Age」の略称で、日本語に置き換えると「妊娠出産育児可能な年齢の女性」という意味です。2014年にヨーロッパ・リウマチ学会(EULAR)で提唱された概念です。

 関節リウマチの好発年齢は40〜50歳といわれていますが、10〜20代で発症することもあります。また、膠原病の中でも全身性エリテマトーデスは、20〜30代に発症することが多いとされています。クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患も10〜30代に多く発症するといわれています。

 これらの年代は、一般に女性にとって妊娠・出産・育児にかかわる機会の多い年代であり、関節リウマチや全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患などの疾患では妊娠により病気が悪化するケースがあり、また使用される薬の一部が、妊娠・出産および授乳に影響を及ぼすことがあります。そのため、かつては関節リウマチをはじめとするこれらの病気の患者さんの妊娠が制限される傾向のあった時代もありました。

 しかし近年、リウマチ診療においては生物学的製剤のなどの新しい治療法の登場により、薬を使いながらの妊娠出産が可能となってきました。また、薬の使用による胎児や出生児の先天異常は、すべての先天異常の約1%程度であり、発症リスクは非常に小さいことが分かってきました。

 一方、関節リウマチなど病気の状態が悪いと、不妊率や妊娠中の合併症の発症リスクが高くなることなどが知られています。もちろんですが、妊娠中の喫煙、アルコール摂取、生活習慣病の罹患なども母体や胎児に悪影響を及ぼします。このため、WoCBA患者さんが妊娠を計画する時や妊娠中は、その時期に使用可能な薬剤を選択しながら、病状を上手にコントロールしたり、禁煙・断酒するなど日々の生活を改善し、妊娠・出産・育児に向けて体調やコンディションを整えたりする必要があります。

 妊娠・出産希望時の問題点とその対策について、かかりつけのリウマチ医だけでなく、看護師や薬剤師などのメディカルスタッフ、そして産婦人科医などに相談し、事前にしっかりと準備を進めていくことを「プレコンセプション・ケア」といいます。

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