2021年4月28日水曜日

ぜんそくの新治療薬

 ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長


ぜんそくの治療について教えてください。

 ぜんそくは、空気の通り道である気道が、炎症などによって狭くなり、呼吸が苦しくなる病気です。ぜんそくの治療に用いられる最も基本的な薬は、気道の炎症をしっかり抑える吸入ステロイド(ICS)です。また、長時間気道を広げる作用のある長時間作用性β刺激剤(LABA)もあり、最近ではその2種類が合剤(複数の成分が一つに含まれる薬)となった吸入薬も多数発売されています。最近、ぜんそく治療はさらに進歩し、ICS/LABAに加えてLABAとは機序の異なる気管支拡張薬である長時間作用性抗コリン剤(LAMA)を一つにまとめた合剤も登場し、その有効性が確認されています。

 LAMAは気管支を広げるだけでなく、咳(せき)や痰(たん)を抑える作用もあり、ICS/LABAの合剤ではゼイゼイ、ヒューヒューなどの喘鳴(ぜんめい)は抑えられても咳や痰が残ってすっきりしないという患者さんに、この3剤配合の薬が有効です。軽症であればICS/LABAの2剤、中等症〜重症であればICS/LABA/LAMAの3剤によるトリプル治療が有効となります。以前は、ICS/LABAの合剤とLAMAの2種類の吸入が必要でしたが、3剤の合剤が登場したことで1日1回の吸入で済むようになり、患者さんにとって治療の継続と症状のコントロールがしやすくなりました。

 医療は日々進展し、新しい薬や治療法が次々に誕生していますが、最新の治療がすべての患者さんに適しているとは限りません。今までの治療で効果が十分であれば、あえて取り入れる必要はありません。本当にその治療が適切かどうか、医師とよく相談することが大切です。

 ぜんそくの患者さんにとって、コロナ禍で一番のリスクになりうることは、治療を中断し、症状が落ち着いていても,気道の炎症がコントロールできていない状態です。ぜんそくをもっていても新型コロナへのかかりやすさは通常の人と同じで、また、ぜんそくは新型コロナ感染の重症化リスクではありません。内服や注射など全身にいきわたるステロイドは感染症を悪化させるといわれていますが、吸入ステロイドは全身にいかず、感染症を悪化させることもなく、抵抗力・免疫力の低下などの影響が出る心配もありません。それどころか、吸入ステロイドを吸入している患者さんは新型コロナにかかりずらいようであり、また吸入ステロイドは新型コロナの重症化を防ぐ効果もあります。実際に定期で通院し、きちんと吸入ステロイドを吸入している患者さんでは新型コロナに感染した方は非常に少ないようです。感染リスクよりも、ぜんそくの治療を中断する不利益の方がずっと大きいです。自己判断で治療を中断するのではなく、適切な治療を継続することが何よりも重要です。

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