2018年1月17日水曜日

緑内障診療ガイドラインの改訂のポイント


ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 院長

緑内障診療ガイドラインについて教えてください。 
 眼圧が上昇し、視神経が損傷を受けて視野が欠けていく緑内障。国内では40歳以上の20人に1人が発症し、中途失明の上位疾患の一つとなっています。主な治療は眼圧を下げる点眼薬で、きちんと継続すれば進行を止めたり遅らせたりして失明を免れることも十分可能です。最近は点眼薬の種類も増え、一層治療の幅が広がっています。
 近年、緑内障の診断、治療に関する知識や手段の発展は目覚ましいものがありますが、眼科医が日常診療において緑内障の患者さんを前にして、常に時代の水準に合致した適切な診療を行うための指針が、日本緑内障学会が編集・出版する「緑内障診療ガイドライン」です。2012年に第3版が刊行されてから5年が経過し、現在その改訂作業が進められているところです。

改訂のポイントについて教えてください。
 第3版が刊行された当時、「発達緑内障」と呼ばれる小児の緑内障については詳細な診断基準がありませんでしたが、改訂版では、発達緑内障という言葉はなくなり、小児緑内障は大きく「原発小児緑内障」と「続発小児緑内障」に二分されることになりました。
 もう一つのポイントは、これまで専門家の間でプレペリメトリー緑内障(PPG)と呼ばれていた、視野検査に異常が出る前段階を「前視野緑内障」と位置付けたことです。改訂前の緑内障の診断基準では、形態学的な変化と、視野の異常という機能的な変化がそろっていることが必要でした。しかし、近年、光干渉断層計(OCT)検査が普及し、網膜の神経線維の厚みの変化をより正確に判定できるようになったため、形態学的な変化・異常がありながらも、通常の視野検査でまだ視野欠損を認めない状態のPPGの診断がつくようになったという背景があります。
 PPGは原則的には無治療で慎重に経過観察されることも多かったのですが、緑内障患者さんにおいて視野障害が現れた時点ではすでに多くの方が網膜に障害を受けていることも分かっています。PPGが前視野緑内障と名付けられたことで、視野に異常が出る前のより網膜の障害が軽い状態から点眼治療を開始するケースが増え、緑内障の患者さん、そして潜在患者さんの視機能の質の維持につながる改訂になったといえるでしょう。

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