2018年1月10日水曜日
発達障害
ゲスト/医療法人社団五稜会病院 中島 公博 理事長
発達障害について教えてください。
近年、発達障害という言葉をあちこちで耳にするようになりました。発達障害は、気持ちを読み取るのが困難な「自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群など)」、読み書きなどが極端に苦手な「学習障害」、気が散りやすい「注意欠如多動性障害」などの総称です。外見からは分かりづらく、厚労省によると、発達障害の人は疑いを含めて約700万人に上ります。
生まれつき、脳の働き方がほかの人と異なるために起こるもので、くわしいメカニズムは分かっていません。子育ての方法が悪いからではなく、また、心の病気とも違います。
発達障害のある人は、家庭や学校や職場でさまざまな困難を抱えているケースが多いです。周囲からはやる気がないとか、いいかげんとか思われやすく、また、理解されにくく、誤解されやすく、孤立しやすく、“生きづらさ”を感じていることが多いです。また、発達障害はそれぞれの特性に合った支援や周囲の理解が得られないと、うつ病やパニック障害などを併発することもあります。発達障害に「ここから」という明確な境界線はありません。診断を受けるほどではないが、発達障害の傾向があり、日常生活に困っている人も多いと考えられます。
診療について教えてください。
自身や家族、周囲の方の“生きづらさ”の原因が発達障害にあるのではないかと感じたら、ぜひ精神科など身近な専門機関に相談してほしいです。病名を恐れて診察を避けるのはマイナスです。例えば、子どもに発達障害がある場合、早い時期に適切な対応を開始することで、発達の偏り自体は変わらなくても、その人らしい成長を支え、不適応を軽減できることがわかってきました。
大人になってから障害に気付く人もいます。本人や家族の声に丁寧に耳を傾けながら、“生きづらさ”を少しでも減らす努力と工夫を重ねていきます。周囲の協力も得ながら、仕事や対人コミュニケーションで、どうすればうまくやっていけるかを考えていきます。
診療や対応の基本は「みんな違って、みんないい」です。発達障害の特徴をむしろ良さとして発揮している人も多いです。周囲の配慮により円滑に仕事をこなす人もいれば、興味ある分野で才能を伸ばす人もいます。
人気の投稿
-
<不登校について教えてください> 不登校の小中学生が2023年度、過去最多の約29万人に上りました。当院の思春期外来でも、受診理由で一番多いのは不登校です。 不登校は大きくは、「行きたくないので、行かない」と「行きたいけど、行けない」の2つのタイプに分かれます。
-
<パーソナリティ症について教えてください> パーソナリティ症については診断基準がいくつかあります。まずは米国精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)に基づいて概説します。そもそもパーソナリティー(性格、人格)の定義は難しいのです。しかし、定義して分類しなければ...
-
<骨粗しょう症について教えてください> 骨の組織では、古い骨を壊して吸収する働きと、吸収された場所に新しい骨を形成する働きが繰り返される「骨代謝」が行われています。骨粗しょう症は、骨代謝のバランスが崩れて骨がもろくなる病気です。