2017年8月9日水曜日

関節鏡下の膝の靭帯再建術と半月板手術


ゲスト/医療法人知仁会 八木整形外科病院 安田 和則 名誉院長

日常特によくみられるスポーツ外傷について教えてください。
 さまざまなスポーツ外傷がありますが、その中でも最も頻度が高く、競技者にとって重大な外傷は、前十字靭帯をはじめとする膝関節の靭帯損傷と半月板損傷です。
 膝の中央にある前十字靭帯は、ジャンプをして着地する際などに痛めやすく、バレーやバスケット、スキーなど膝に負担の大きいスポーツ競技者に多いケガです。症状は膝がガクッとなったり、外れた感じがします。これらは一般的に「膝崩れ現象」と呼ばれます。靭帯は一度伸びると元には戻らないので、競技を続けると膝崩れ現象が頻繁に起き、今度は関節のクッション役を担う半月板にダメージを与えます。これが重なり半月板損傷に発展すると、膝をひねると痛い、引っかかる、まっすぐ伸びないなどの症状が生じます。前十字靭帯損傷と半月板損傷を併発しているケースも多く、放置すると関節軟骨の破壊や変形性関節症を引き起こす原因となります。

前十字靭帯損傷、半月板損傷の治療について教えてください。
 前十字靭帯損傷は、ギプス固定や手術的な縫合では治癒しないので、競技者として復帰を望む場合は靭帯再建術が必要です。当院では、「解剖学的二束前十字靭帯再建術」という関節鏡手術を行います。前十字靭帯は2つの繊維束から構成されています。この手術は、2本の移植腱(けん)を用いて前十字靭帯を本来の形状通りに再建する方法です。1本の移植腱を使う従来の術式に比べ、身体への負担が少なく、膝の安定性を高められることが科学的な研究により証明されており、ほとんどのケースで靭帯機能が正常に再建できます。
 半月板は損傷した部位が血行の良い場所にある場合は、関節鏡手術で縫合して治すことができます。また、縫合では治癒が見込めない部位の損傷でも、傷ついた箇所のみを切除し、健常な部分は温存する低侵襲な関節鏡手術を行っています。
 靭帯再建術の術後は、関節の負担を軽減するために用いる器具(ブレース)を装着し、すぐに段階的な歩行訓練(部分荷重歩行)が可能です。1週間後から膝可動域の訓練を行い、2〜4週間で退院できるのが一般的です。また、半月板縫合術の術後はブレースを装着し、1週間後から部分荷重歩行を、2週間後から膝可動域の訓練を始めます。半月板切除術は、術後すぐに部分荷重歩行が可能で、入院期間は約1週間です。

人気の投稿

このブログを検索