2017年8月2日水曜日

ADHD(注意欠如・多動症)


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 鈴木 悠史 医師

ADHDとはどのような病気ですか。
 ADHDは、日本語で「注意欠如・多動症」と呼ばれる発達障害の一つです。自分をコントロールする力が弱く、それが行動面の問題となって現れてきます。ADHDでは「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの症状が特徴的です。
 集中力が続かない、気が散りやすい、忘れっぽい、時間管理が苦手、片付けが苦手などの「不注意」。じっとしていることが苦手、落ち着きがない、貧乏ゆすりなど目的のない動きがみられる「多動性」。衝動買いなど、思いついたことを即座に行動に移してしまう「衝動性」が主な症状です。
 現在、広く用いられている診断基準(DSM-5/アメリカ精神医学会)では、12歳になる前から上記のような症状がみられるものとされています。有病率は、子どものADHDは、中学生以下の子どもの人口の約5%(DSM-5報告)とされ、わが国の文科省の調査では3.1%と報告されています。また、大人のADHDは、成人の人口の約2.5%(DSM-5報告)とされ、世界保健機関(WHO)が行った多国間共同調査では国によってばらつきはみられますが、全体では3.4%と報告されています。

ADHDの治療について教えてくだい。
 治療は、対人関係能力や社会性を身につける心理社会的治療(環境調整、ペアレントトレーニング、ソーシャル・スキル・トレーニング)と薬物療法を組み合わせて行います。
 薬物療法では、現在それぞれ特徴が異なる3つの薬があり、患者さんによって選択できます。薬物療法により症状の改善が期待できる場合もありますが、治療の目標は、本人が自分の行動特性を理解し、受け入れ、その行動特性を是正するために立ち向かう勇気を持たせることにあります。
 ADHDはしつけや道徳心の問題だと誤解され、他の発達障害と比べて周囲からなかなか理解されにくい傾向があります。そのため、しかられたり批判され続けることで自尊心が傷つき、いじけたり投げやりになる悪循環に陥りやすいです。心理社会的治療などでうまく生活する知恵やコツを身につけ、自信を持って自分の特性と折り合うこと、それによって家庭や学校、職場での悪循環を断ち切り、充実した社会生活を送れるようになることが最大の目標となります。

人気の投稿

このブログを検索