2017年5月17日水曜日

好酸球性食道炎


ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長

好酸球性食道炎とはどのような病気ですか。
 好酸球性食道炎は、アレルギーと関係の深い白血球の一種・好酸球が食道の粘膜に集まり慢性的な炎症を起こし、食道の機能障害や食道が狭くなること(狭窄といいます)などを引き起こす病気です。日本では比較的まれですが、小児から成人まで幅広い年齢層で発症しています。男性に多く、近年患者数が増加しています。
 症状は年齢により異なり、乳幼児では哺乳障害、幼児から学童では嘔吐、学童から成人では腹痛や嚥下障害(食べ物が飲み込みにくい)、食べ物のつかえなどがあります。
 原因はまだ明らかになっていませんが、食物などに含まれる物質に対するアレルギー反応が関係していると考えられています。気管支ぜん息などアレルギー疾患を合併する頻度も高いです。
 一方、好酸球が食道ではなく、胃や小腸、大腸の粘膜内に集まる、好酸球性胃腸炎という病気もあります。主な症状は食欲不振、嘔吐や腹痛などです。好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎を合わせて好酸球性消化管疾患といい、厚生労働省の指定難病になっています。

診断と治療について教えてください。
 症状の似ている逆流性食道炎との鑑別が大事になりますが、診断の決め手となるのは、食道機能の障害を示す症状があることに加えて、病理組織学的検査で粘膜の中に一定数以上の好酸球が確認されることです。このためには内視鏡検査が必要です。内視鏡検査では特徴的な縦走する溝や白斑、狭窄がみられますが、まったく異常のない場合もあります。血液検査で好酸球の増加やアレルギー反応に関する抗体の有無、CT検査で食道壁の肥厚を認めるか、なども参考にします。
 治療は、アレルギーを起こす物質(アレルゲンといいます)が分かる場合には、そうした物質を除いた食事療法が有効です。アレルゲンになりやすい食品には、小麦製品、牛乳、大豆、ナッツ類、卵、海産物などがありますが、原因食物を摂取してもすぐに症状が出るとは限らないので、特定が難しいケースも多いです。このため、成分栄養食やアレルゲンとなりやすい既定の食材を取り除いた既定除去食を試みることもあります。
 薬物療法として、まず胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬を用います。効果がない場合には、好酸球による炎症を抑えることを目的に、副作用の少ない局所作用ステロイド薬を用います。治療に難渋する場合には全身性ステロイド薬や免疫抑制薬などを用いることもありますが、副作用が出たりするので専門医療機関での治療が必要になります。薬物療法ではありませんが狭窄のため食物がつかえる場合には、特殊なバルーン(風船)を用いた拡張術が行われることもあります。

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