2017年5月10日水曜日
アルコール依存症(アルコール使用障害)
ゲスト/特定医療法人北仁会 いしばし病院 白坂 知信 院長
アルコール依存症、アルコール使用障害について教えてください。
アルコール依存症とは、家庭や仕事、健康より飲酒をはるかに優先させる状態のことです。
アルコール依存症は、いわゆる“アル中”のイメージが強く、意志の弱い人や生活のだらしない人がかかるものと思われがちです。しかし、これは誤った認識です。アルコール依存症は、お酒を飲む人なら誰しもかかる可能性のある「生活習慣病」の一つです。決して特別な病気ではないのです。このことを理解するのが、予防や治療の大切な第一歩です。
2014年からアルコール依存症は、差別意識や不快感を生まないよう「アルコール使用障害」という病名に変わりました。依存症までには至らなくても、飲酒によって身体的・精神的に何らかの障害を生じ、社会生活に支障をきたしている状態も含むアルコール使用障害の患者は、国内に約500万人いるとされます。
治療について教えてください。
アルコール使用障害と病名が変わり、治療も入院中心の医療から外来での治療を重視する方向に変わりました。治療目的も「断酒」一辺倒から、「節酒」の選択も可能になってきました。はじめから「一生、断酒が必要」と無理強いするより、本人が納得するまで節酒に挑戦してもらい、どうしても減らせないならやめるしかないと自覚を促していく方が治療効果は大きいです。急がば回れです。
治療には、薬物療法、カウンセリング、集団精神療法、断酒会への参加などがありますが、画一的な治療は難しいです。患者さん一人一人の状態、状況に応じ、いくつかの治療を組み合わせ、飲酒習慣の改善を目指します。「一度、依存症になると治らない」というのも大きな誤解です。適切な治療を続けることで、必ず回復・社会復帰できる病気です。
予防も治療と同様、自分の飲酒に問題がないか意識することから始まります。飲酒習慣をセルフチェックできるテストは何種類かありますが、その一つがAUDIT(オーディット)です。10の設問に答え、回答の点数を合計すると、問題のある飲酒かどうかを確認できます。また、3週間、アルコールを一切飲まないでいられるかどうかも、アルコール使用障害を判別する一つの目安となります。
飲酒について少しでも問題を感じていたら、どうか気軽に医師相談してください。
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