2016年12月16日金曜日

「双極性障害」


ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 山中 啓義 副院長

─双極性障害とはどのような病気ですか。
 双極性障害は、「躁病エピソード」と「大うつ病エピソード(抑うつ気分・興味や喜びの消失・食欲減退・睡眠障害・無価値感・自責感・疲労感・気力の減退・思考力や集中力の減退などが2週間以上持続)」の2種類の「気分エピソード」を繰り返す疾患であり、かつては「躁うつ病」と呼ばれていました。
 躁病エピソードの基本的な症状として、①気分高揚・爽快・怒りっぽい ②過度の自尊心・誇大的思考 ③睡眠欲求の減少 ④多弁 ⑤考えが次々と浮かぶ ⑥注意の散漫 ⑦目的指向性のある行動が高まる、あるいは焦燥 ⑧困った結果を引き起こす可能性が高いにもかかわらず、自らの楽しみに熱中する—などがあります。これらのいくつかの症状が少なくとも1週間、ほぼ毎日、1日の大半において継続する場合を躁病エピソード、少なくとも4日間継続する場合を軽躁病エピソードと診断します。
 躁状態やうつ状態は古代より疾患として認識されており、一見正反対の状態が同一の疾患であると提唱されたのは古代ギリシアの時代でした。現在、はっきりとした躁病エピソードのある場合は「双極I型障害」と診断され、軽躁病エピソードと大うつ病エピソードを繰り返す場合は「双極II型障害」と診断されます。わが国では、双極I型障害と双極II型障害を合わせての有病率は0.8%程度といわれています。発症は20歳代に多く、性差はほとんどありません。遺伝率は比較的高いとされています。
 双極性障害はうつ病と比べると、まだ社会的な認知度が低い疾患ですが、放置しておくと、何度も躁状態とうつ状態を繰り返し、人間関係や家庭生活、仕事や学業などに支障をきたすケースがあります。また、うつ状態では自殺の危険性も高まることが知られています。

─双極性障害の診断と治療について教えてください。
 双極性障害は、うつ病と診断される場合も多く、見逃されやすい疾患です。双極性障害の患者さんは経過中、約30〜50%の期間をうつ病エピソードで過ごしているという報告があります。このように、うつ病エピソードの期間が長いことが疾患の発見を遅らせる原因の一つなのかもしれません。また、双極性障害はうつ病エピソードで発症する場合も多いとされています。
 近年の研究報告では、うつ病として治療されていた患者さんが実は双極性障害であったと診断されるケースの関連因子として、①抗うつ薬による躁転 ②抑うつ性混合状態 ③過去1年間のエピソード回数が2回以上 ④大うつ病エピソードの初発年齢が25歳未満 ⑤自殺企図歴—などがあります。5項目のいずれかが認められる場合、より注意して過去の躁病・軽躁病エピソードを確認する必要があるとされています。
 診断が確定した場合、治療は気分安定薬や第2世代抗精神病薬などを主剤とした薬物療法が第一選択肢となります。また、心理療法として認知行動療法、対人関係療法、家族心理教育、集団心理教育などの有用性も報告されています。
 思い当たる症状があれば、まずは精神科・心療内科を受診して相談してみてください。

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