2016年1月27日水曜日

高齢者ぜんそくとCOPD(慢性閉塞性肺疾患)


ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長

高齢者ぜんそくとCOPDの合併について教えてください。
 気管支ぜんそくに対する吸入ステロイド薬をベースにした、ぜんそく治療が広く普及した昨今では、ぜんそくによる死亡者数は大きく減少しています。しかし、人口構成の高齢化に伴い、ぜんそくによる死亡者数に占める65歳以上の高齢者の割合は増加しており、ぜんそく死亡者数の約9割にも上ります。
 一方、長期間にわたる喫煙習慣が主な原因であるCOPDは、「肺の生活習慣病」として社会的にも大きな注目を集めています。これは肺気腫や慢性気管支炎により、肺の機能が低下した状態をまとめた病名で、進行すると肺の組織が破壊され、肺機能が低下し、呼吸困難まで引き起こします。
 現在の高齢者は喫煙歴を有する人の割合が高く、COPDを合併する高齢のぜんそく患者は少なくありません。厚生労働省の調査では、高齢のぜんそく患者の約25%はCOPDを合併していると報告されています。高齢者ぜんそくとCOPDの合併は、相互に増悪しやすい環境を作り出し、生命予後を大きく悪化させます。

診断と治療について教えてください。
 2つの病気は、気道が狭まって呼吸困難になるなど症状が共通しています。ぜんそくかCOPDか、あるいは両方を合併しているのかについては、身体の状態を詳しく問診しいろいろな検査を経て、鑑別、診断します。
 現時点でCOPDを根本的に治し、肺を元の状態に戻す治療法はありません。呼吸機能を改善し、咳(せき)、痰(たん)、息切れなどの症状を緩和し、生活の質を高めることが治療の目的となります。症状の軽重にかかわらず、治療の基本は禁煙です。喫煙を続ける限り、病気の進行を止めることはできません。そして、薬物療法により症状を改善しながら、呼吸機能の維持・増進を図っていきます。ぜんそくでは吸入ステロイド薬、COPDでは長時間作用性抗コリン薬、長時間作用型β2刺激薬などの気管支拡張薬が用いられます。
 ぜんそくとCOPDが合併していると、単独の場合よりも治療が難しいケースがほとんどですが、早期に専門医による適切な治療を開始し、禁煙や服薬など自己管理を徹底することで、生活の質は改善され、健常な人と同様の生活を送ることは十分可能です。早めに治療を行うほど高い治療効果を望めますので、早期受診がなによりも重要です。

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