2016年1月6日水曜日

歯に優しい土台「ファイバーコア」


ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

最近耳にする機会が増えた「ファイバーコア」とはどのようなものですか。
 ファイバーコアとは、グラスファイバーという特殊な素材でできた、歯の土台のことです。
 虫歯やその他の原因によって歯の神経を除去すると、その後の処置として歯の補強を行う必要があります。歯の神経の管を利用して、歯根の2分の1から3分の2程度の位置に、基礎となる土台を立ててからクラウン(冠)をかぶせるのが一般的な治療法です。歯の土台とは、いわゆる差し歯をつくる際に必要不可欠なものです。
 これまで保険診療では、鋳造した金属のみの土台(メタルコア)、または金属と樹脂を併用した土台しか認められていませんでしたが、2016年1月から金属を使用しないファイバーコアも保険診療で使えるようになり、その注目度が高まっています。

ファイバーコアの利点とは何ですか。
 神経を取った歯は痛みを感じませんが、神経がある歯と比べてややもろいところがあります。神経の処置を施した後に立てた歯の土台は、土台の深い場所から応力が生じやすく、かむ力の強い人や歯ぎしり、食いしばりの強い人などは、歯根の破折を起こしてしまうケースもあります。歯根の破折は抜歯するしか手立てがないため、歯科医師にとって長い間、悩みの種でした。
 歯の土台は家に例えるならば、柱や基礎となる大変重要な部分です。金属材料を使った土台の欠点として、歯根のしなり具合よりも金属の方が硬いため、ストレスが集中し、歯根への負担が大きいということがあります。一方、ファイバーコアは、適度な強度としなやかさを持ち合わせており、これを強い接着システムにより歯根と一体化させているので、歯根が破折しにくくなっています。耐震性、免震性のある土台といえます。また、金属製の土台の場合、腐食などにより歯茎の色が変色することもありましたが、その心配も軽減できます。
 大臼歯のクラウンは金属のものしか保険が適用されませんが、小臼歯においてはハイブリッドセラミック冠の一部が保険適用になっています。ブリッジ以外の小臼歯の治療では、保険診療でメタルフリーの治療が可能となり、金属アレルギーの不安もありません。
 今後の歯科治療は、可能な限り金属材料を使わない方向で発展進歩していくと思われます。

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