ピロリ菌について教えてください。
ピロリ菌は1983年にオーストラリアのワレンおよびマーシャル博士によって初めて分離、培養されました。正式名称はヘリコバクター・ピロリ菌という胃粘膜に生息するらせん形の細菌で、胃、十二指腸潰瘍(かいよう)、胃炎、胃がんの原因となっていることが分かっています。胃には胃酸があるため通常の菌は生息できませんが、ピロリ菌はアンモニアを産生し、胃酸を中和して胃の中でも生存することができます。
日本では若い人の感染率は低いのですが、40歳以上では約80%もの人が感染しています。ピロリ菌感染を予防する方法は、はっきりと分かっていませんが衛生環境が整った現代ではピロリ菌の感染率は著しく低下していますので、あまり神経質になる必要はないでしょう。
ピロリ菌に感染すると、まず胃粘膜に炎症が起こり、この状態が長期間持続すると胃粘膜の萎縮(いしゅく)が進行します。この萎縮性胃炎は前がん状態と考えられています。ピロリ菌感染者の一部に胃、十二指腸潰瘍が発症しますが、胃潰瘍患者の80%、十二指腸潰瘍患者の95%がピロリ菌陽性です。
ピロリ菌の除菌について教えてください。
胃・十二指腸潰瘍の主要な原因がピロリ菌であることが分かり、また再発や治りにくさにもピロリ菌が関係していることが分かってから治療法が大きく変わりました。ピロリ菌を除菌するために2種類の抗生剤と胃酸分泌を強力に抑制するプロトンポンプ・インヒビターを併用する方法で、治療期間は一週間です。治療後、4週間以上経過してから、ピロリ菌が除菌できたかどうか、もう一度検査します。この治療法によって、大部分の胃・十二指腸潰瘍の再発を防ぐことができます。もっとも、胃、十二指腸潰瘍の中にはピロリ菌が関与していないもの(鎮痛剤による潰瘍、お酒やタバコ、ストレスによる潰瘍など)もあり、この場合は除菌療法の対象外です。
ピロリ菌感染の有無は、内視鏡検査で胃粘膜を採取して調べる方法のほか、尿素呼気試験、血清抗体測定、便中の抗原測定などがあります。なお近年、萎縮性胃炎に対しても胃がん予防の見地から除菌療法をしたほうが良いという意見が強くなってきています。