2010年7月7日水曜日

「関節リウマチの新しい診断基準」

ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 院長

関節リウマチの診断について教えてください。
 リウマチクリニックを初めて訪れる患者さんは、関節のこわばり、痛み、腫れなどの自覚症状があり、不安に思っている人がほとんどです。医師としては、初期のリウマチを見逃さないように慎重に診断する必要があります。初期リウマチの発見は難しいものです。まず、患者さんの話をよく聞いて、リウマチを疑う症状を見つけます。本人持参の資料、メモ、検診表を見て、丁寧に診察します。診察では特に「腫れ」に注目します。握力も大事な所見です。診断基準表に記入し、診断の目安をつけます。腫れの具合が分かるような写真撮影や、その時点で異常がなくても後に比較が可能なレントゲン撮影も欠かせません。関節エコー、MRI(磁気共鳴画像装置)などの画像診断も可能な限り積極的に行います。血清検査はとても有効です。基準値以下でも症状が持続する場合には注意深く観察します。
 
関節リウマチの新しい診断基準が提唱されたと聞きましたが、その内容について教えてください。
 最近、アメリカとヨーロッパのリウマチ学会で、今までに代わる新しいリウマチの診断基準が提唱されました。私たち日本の学会でも日本の患者さんに当てはめ、それがどのように有用か、問題はないかなどを確かめ始めているところです。今回の改正のポイントは今までの診断基準ではかなり症状や所見がそろわないと確定診断ができなかったところを、少しでも多くの早期の患者さんを発見することができるよう改正したことです。その理由は、リウマチを早期に発見し診断すれば、早期に治療に入ることができるからです。また、現在はかなり有力な治療法(特に生物的製剤)が出てきて、それらを早期に使用すれば関節を破壊しなくても済む可能性が出てきているからなのです。
 今回提唱された内容は、①関節病変②血清学的因子③滑膜炎持続期間④炎症マーカーの4項目から成り立ち、各項目の総合点でリウマチと考えるかを決めることになっています。しかし大切なのは、この基準に当てはめる前にリウマチに似た他の疾患を除外しておくことです。これは時によって難しいケースも多く、リウマチの専門医にとってはその点をしっかり診て、判断していくことが今後の重要な使命の一つになるといえるでしょう。

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