2010年6月2日水曜日

「夜間頻尿」

ゲスト/ベテル泌尿器科クリニック 三熊 直人 院長

夜間頻尿とはどのような症状ですか。
 排尿に関する症状は、蓄尿症状(おしっこをためることに関する症状)、排尿症状(おしっこを出すことに関する症状)、そして排尿後症状の三つに大別されます。
 蓄尿症状は、さらに夜間頻尿、昼間頻尿、尿意切迫感(我慢できない強く切迫した尿意感)、尿失禁に分類されます。夜間頻尿とは夜間に排尿のために1回以上起きなければならない症状です。夜間頻尿は加齢とともに増加し、生活の質(QOL)を低下させる大きな要因となっています。これは排尿困難(おしっこが出づらいこと)とともに典型的な前立腺肥大症の症状ですが、前立腺肥大症以外の要因でも起きることは意外にも知られていません。夜間頻尿の発生頻度は、前立腺を持たない女性でも男性とほぼ同等です。

夜間頻尿の原因として、前立腺肥大症以外にどんな病気が考えられるのですか。
 第一の病因は夜間多尿です。多尿とは尿の過剰生産を意味します。その原因としては糖尿病、水分過剰摂取(食物からの摂取と飲水)、薬によるもの、脳障害、高血圧、うっ血性心不全、腎機能の低下、肝不全、低たんぱく血症、アルコール、カフェインの摂取、ADH(脳下垂体ホルモン)分泌異常など多岐にわたります。この中で、水分過剰摂取が原因として考えられるケースでは、心因性要素が強い過剰飲水によるものと、脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞、狭心症の予防を目的として水分摂取が過剰になっている場合があり、専門医による適切な生活指導や飲水指導が必要となります。
 第二の病因は過活動膀胱(ぼうこう)です。過活動膀胱とは週1回以上の尿意切迫感を伴う頻尿の状態で、前立腺肥大症によっても発生しますが、それ以外に加齢、脳血管障害、パーキンソン病、後縦靭帯(じんたい)骨化症なども関与します。
 第三の病因は睡眠障害です。3回以上の夜間頻尿では不眠の影響が大きく、不眠症、うつ病、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群などが原因です。高齢者の睡眠は浅く、目が覚めやすいことが知られています。
 このように夜間頻尿の原因は複雑です。一つの病気ですべてを説明できることは少なく、複数の原因が関係しています。まずは病態を知ることが治療の糸口になりますが、治療は決して容易ではありません。

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