食生活と口腔機能の関連について教えてください。
欧米型の食事や外食の普及、加工食品の増加など、食生活や食卓の風景が変わってきました。こうした食をめぐるさまざまな変化により、私たちの暮らしに新たな問題が生まれていますが、高齢者や成長期の子どもに“噛(か)まない・噛めない”“口が開かない”“食べこぼす”“飲み込めない”“むせる”“うまく話せない”など口腔(こうくう)機能の障害が増加していることもその一つです。
「8020運動」の浸透で、80歳まで自分の歯を20本以上保っている人が増えています。しかし、残っている歯の本数ではなく、その質に注目した「FTU(機能歯指数)」という評価方法で見てみると、12点満点中、平均値が2点以下という厳しい実態となっています。これは、20本以上の歯が残っていても、上の歯と下の歯の噛み合わせが悪く、本来の機能を果たしていないということです。子どもや若年層にも歯列不正や顎関節症など、噛み合わせに問題のある人が増えています。
咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)、正しい噛み合わせの基本は、毎日の食生活にあります。よく噛み、味わい、しっかり飲み込むなど、正しい食生活が口腔機能を育て、成長させるのです。
普段の食生活や食習慣でどのようなことに気を付ければいいですか。
ファストフードや調味料に頼った食品、あまり噛まなくても飲み込めるような食事を避け、噛めば噛むほど味の出る食材を選ぶようにしましょう。自然に上手に噛むことができ、噛む力も強くなります。季節感のある食材を選ぶことも大切。旬の食べ物のおいしさに感動する体験が、正しい食生活につながります。
食習慣の改善も重要です。まずは正しい姿勢で食事をとること。食事中、床に足が着いていなければ体のバランスが取れず、噛むのに力が入りません。テーブルやイスは体格に合ったものを選びましょう。次に、孤食を避け、家族や友人と一緒に食事をすること。一人での食事は、好きなものばかり食べたり、早食いしたりと食生活の乱れを招きます。“ながら食事”もやめましょう。食事に集中できず、噛むことがおろそかになりがちなうえ、姿勢を崩す大きな原因にもなります。
口の健康はもちろん、心身の健康を維持するためにも、日常の食生活・食習慣を見直してみてください。