2003年10月8日水曜日

「肺炎」について

ゲスト/岡本病院 松浦 信博 医師

肺炎について教えてください。

 多くの人が「肺炎で命を落とす人は少ない」と考えていませんか。実際、現代でも肺炎は日本人の死因の第4位で、生死にかかわる重大な疾患の1つです。昔から肺炎は「老人の友」と呼ばれており、肺炎が原因で死亡した人の92%を、65歳以上の高齢者が占めています。肺炎には大きく分けて市中肺炎と院内肺炎があります。市中肺炎は風邪症候群に続発して発症するもので、健常な若年成人に多くみられます。起因微生物による分類としては、細菌性の肺炎と、マイコプラズマ肺炎、レジオネラ肺炎、話題になった新型肺炎(SARS)のようなウイルス性肺炎などの異型性肺炎に分けられます。症状としては、6日以上の発熱、せき、痰(たん)、胸膜痛、息切れ、全身倦怠(けんたい)感、頭痛などが挙げられます。特に肺炎球菌による肺炎は、悪寒戦慄(せんりつ)が特徴的です。胸膜痛がある場合は、肺炎の可能性が高くなるので、注意深い観察が必要です。高齢者、喫煙者、肺疾患患者、大酒家、糖尿病患者、インフルエンザ罹患(りかん)者、ステロイド使用者などは、肺炎にかかりやすい状態にあるので、注意してください。食生活が乱れ栄養が偏っていたり、不規則な生活をしている人も同様です。市中肺炎は、早めに治療を始めれば、多くの場合、投薬だけで治癒します。風邪をこじらせて肺炎になる場合がほとんどなので、風邪症候群の段階で、十分な栄養と水分を取り、安静にすることが1番の予防です。

院内肺炎とは、どのような肺炎ですか。

 入院中の免疫力の低下した患者(自宅療養も含む)に合併する肺炎で、その多くが誤嚥(ごえん)性肺炎で悪臭痰を伴うのが特徴的です。市中肺炎と異なり典型的な症状に乏しく、全身倦怠感や食欲不振、意識障害だけの症状で、肺炎の診断が遅れることもあります。起因菌は、グラム陰性菌、嫌気性菌、真菌などで、いずれも重篤な症状に陥りやすく、肺炎による死亡者のほとんどが院内肺炎によるものです。診断には血液検査、胸部レントゲンのほか、胸部CTを行うとより的確な診断ができます。肺炎を繰り返すと肺の機能自体が低下するので、誤嚥(誤って異物が気管に入ること)の予防に努めることが重要です。

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