2003年10月1日水曜日

「更年期障害のホルモン補充療法の是非」について

ゲスト/札幌東豊病院 野村 靖宏 医師

更年期障害について教えてください。

 女性の平均閉経年齢は50.5歳で、この前後から急速に性腺機能が低下し、特に卵巣では卵胞発育・排卵・黄体形成の一連の機能が停止します。これに伴い女性ホルモンの分泌が減少し、ほてりや動悸(どうき)、のぼせ、うつ、性欲減退、乾燥による性交痛など、更年期障害と呼ばれるさまざまな症状が出現します。また、女性ホルモン、エストロゲンの不足によって、骨粗しょう症、高脂血症、動脈硬化などが出現します。更年期障害の不快な症状を改善し、骨粗しょう症、高脂血症などを予防するために、ホルモン補充療法があります。これは、1960年代から行われている治療で、欧米では対象女性の約30%が投薬を受けているポピュラーな治療法です。日本では漢方による治療もあり、ホルモン補充療法を受けている人は2%程度です。

ホルモン補充療法は安全なのでしょうか。

 昨年、アメリカ保健局からホルモン補充療法の大規模試験の結果が報告されました。それによると、骨粗しょう症、大腸ガンの減少には有効だが、動脈硬化、血栓、乳ガンは増加するというものでした。この報告を受けて、日本でもホルモン補充療法の是非が話題になりました。実際に治療中の患者さんの中にも不安を感じられた方が多いと思います。調べてみると、今回の大規模臨床試験の対象者は平均で63歳と高齢で、50~60歳くらいまで服用する日本とは事情が違います。また、6割が肥満や肥満気味、喫煙率は5割、3人に1人が高血圧であるということが判明しました。日本とは事情が違うので、アメリカの結果を受けて、そのまま日本人に当てはめて良いのか疑問が残ります。今後は長期的な追跡調査などをして日本独自のデータ収集が必要になるでしょう。現時点では、間違いなく更年期障害の不快な症状を緩和し、骨粗しょう症、大腸ガンを予防します。リスクとしては乳ガンの微増、また循環器の疾病を予防する働きはあまり期待できないということです。ホルモン補充療法を受ける場合は、ハイリスクな疾病がないか、定期的な健康診断を欠かさず、乳ガン検診を受けるなどが重要です。閉経後数年間、ホルモン補充療法を行うくらいが良いと思われます。

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