2003年3月5日水曜日

「小児の嘔吐(おうと)・下痢を伴う胃腸炎」について

ゲスト/札幌東豊病院 秋原 実 医師

この季節の子どもの病気について教えてください。

 今の季節、乳幼児に多いのは、ロタウイルスなどの感染による嘔吐・下痢を伴うウイルス性胃腸炎です。下痢や嘔吐の症状があると、お母さんは慌ててしまいますが、子どもには多い感染症なので、落ち着いて様子を見てください。多くの場合、嘔吐の症状を伴います。いきなり吐くと、お母さんは焦って水分を取らせようとしたり、何か食べさせようとすることが多いのですが、ここで肝心なのは、嘔吐の後、最低1時間程度は何も口に入れないことです。胃に物が入ると、また嘔吐を繰り返すことになります。現代の日本の子どもで「栄養不良」を心配する必要はありませんので、ゆっくり回復を待ちましょう。吐き気が落ち着いて大丈夫なようなら、少量の水分を与えます。この場合、糖分のあるものは逆効果なので、水やお茶、スポーツ飲料で十分です。そして様子を見ながら消化の良い食べ物を与えます。この場合も「栄養」にこだわることはありません。タンパク質や脂肪は避けて、重湯、おかゆ、うどんなど胃腸に負担のかからないものを与えます。絶食の時間は個人差がありますが、機嫌が良いようなら心配はいりません。ただ、ぐったりとしているようなら、脱水の心配がありますから、早めに受診してください。子どもの嘔吐や下痢を薬で抑えたり、点滴を安易にすることはお勧めしません。見た目の症状だけ解消しても、本質的な回復ではないからです。しかし重症例で、経口摂取が困難な場合は、点滴が不可欠な場合もあります。

ウイルス性胃腸炎と間違えやすい病気はありますか。

 嘔吐や下痢を伴う病気で、見逃してならないのは腸重積です。腸管がその先の腸管の中に入り込み、腸が二重になった状態になる病気で、生後4カ月ころから2、3歳までの乳幼児に多く発症します。元気だった子どもが突然おなかを痛がって泣きわめく、ぐったりする、顔面蒼白(そうはく)になる、嘔吐するといった症状が現れます。いったん治まっても、また繰り返すことがあります。さらに血便が出るようなら、ただちに受診してください。腸重積になってあまり時間がたっていなければ、肛(こう)門から造影剤や空気で圧を加えることによって、腸が入り込んで閉塞(へいそく)している部分を正常な状態に戻します。発症後時間がたって、圧を加えるだけでは治らない場合は、外科手術による整復が必要になります。頻度は少ないですが、もっとも恐ろしい疾患といえます。

人気の投稿

このブログを検索