2022年8月18日木曜日

月経前の精神的不調について

医療法人社団 正心会 岡本病院 瀬川 隆之 医師

―月経前になるとイライラや気分の落ち込みが激しくなるのですが、これは病気でしょうか? 

 月経前の時期に精神的、身体的に不調となる女性は多く、このような不調を月経前症候群(PMS)といいます。その中で特に精神症状が重いものを月経前不快気分障害(PMDD)と呼び、月経のある女性の5%程度が当てはまります。PMDDはアメリカではうつ病の一種として扱われています。PMSやPMDDの精神症状は、排卵後から月経開始日前後の間にみられる憂うつな気分やイライラなどで、情緒不安定となり周囲の人とトラブルになることもあります。月経が始まるとこれらの症状は消失します。

 月経前の不調は、元からある精神疾患の症状悪化としてみられることもあり月経前増悪(PME)とも呼びます。うつ病の患者さんではさらにうつ状態が悪化し、統合失調症の患者さんでは自分を責める幻聴が増えたりします。PMSは婦人科での対応となりますが、PMDDやPMEとなると精神科がかかわる必要があるでしょう。

―治療について教えてください。

 PMS、PMDD、PMEは女性ホルモンの変動が主な原因と考えられています。そのため婦人科的治療では低用量ピルなどを利用し、排卵を抑制してホルモンの変動を抑えます。また、女性ホルモンにより脳内のセロトニン神経系に変化が生じていることが推測されているため、精神科的治療としては抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を使用します。うつ病の治療時とは異なり、少量のSSRIで数日以内に効果が現れるケースが多いです。即効性があるため月経前の時期だけSSRIを内服する間欠療法が可能ですが、月経周期がはっきりしない場合や間欠療法では十分に効果が出ない時には継続的な服用が必要となります。

 副作用などでSSRIが使えない場合は「加味逍遙散」「抑肝散」などの漢方薬で、ある程度症状が改善することがあります。またストレスで症状が出現、悪化する病気であるため、月経前の時期には特にストレスを避けるよう気を付けてもらいます。

 精神科などで指摘されて初めて、精神症状が月経周期と関連していることに気付く方もいます。自身の精神的不調が月経周期と関連していないか、特に月経前の時期に症状が出現している方は一度受診して確認してみてはいかがでしょうか。

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