2022年8月4日木曜日

新型コロナ感染・療養後の長引く咳(せき)について

 ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 院長


新型コロナウイルス感染症の療養後も咳(せき)症状が残っている場合、どのような病気が疑われますか。

 新型コロナウイルス感染症の症状は、咳のほか、発熱や倦怠感、咽頭(いんとう)痛などさまざまなものがあります。熱が下がり、のどの痛みなどもおさまり、体調が回復したと思っても、咳だけが残る場合があります。「コロナ後遺症」の可能性も考えられますが、コロナ感染・療養後に長引いている咳は、肺に通じる気道に炎症が起こる「ぜんそく」やその前段階とされる「咳ぜんそく」が疑われます。

 ぜんそくや咳ぜんそくの咳は、●季節の変わり目に咳が出る ●痰(たん)が少なく、乾いた咳が出る ●夜寝る前や早朝に咳が出る ●のどがイガイガしたりムズムズしたりする、といった特徴があります。ハウスダストや花粉、カビなどのアレルギー物質が原因となることが多く、小児ぜんそくの既往がある方やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎を持っている方がかかりやすいです。初期段階では、昼間は落ち着いていても、寝ている夜間や明け方に激しくせき込み、呼吸時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音がする喘鳴(ぜんめい)が起こることが多いです。

 タバコを吸う方であれば、主に喫煙が原因で、気道が閉塞して呼吸機能が低下する「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」も疑われます。


検査や治療について教えてください。

 咳が1週間以上続く場合、まず胸部レントゲン検査を行います。異常が認められると、精密検査として胸部CT検査を行うのが一般的です。ぜんそくやCOPDの診断には、息を思いっきり吸ったところから勢いよく吐き出し、その1秒間に吐いた量を評価する肺機能検査が有用ですが、息を吐き出す時に飛沫が飛ぶ可能性があるため、コロナ禍ではなかなか行いづらくなっています。そこで、肺機能検査に準ずるものとして、患者さんからの症状の聞き取りや患者さんに回答してもらう質問票が重要になります。

 ぜんそく、咳ぜんそくの治療は、一般的な咳止めの薬では症状の改善がなかなか難しく、吸入ステロイドや気管支拡張剤などを使います。何よりも重要なのは、治療していく中で咳症状が落ち着いてきても、自己判断で治療を中断しないことです。気管支内の炎症は長く残ることが多いので、一定期間、決められた吸入回数で継続した治療を行うことが大切です。

 COPDと診断された場合も、狭くなった気管支を拡げて呼吸を楽にする吸入薬を使います。ぜんそく同様、継続的な治療が必要です。また、症状を悪化させないためにも禁煙が治療の前提となります。

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