2022年3月9日水曜日

白内障手術(多焦点眼内レンズ)の「選定療養

 ゲスト/月寒すがわら眼科 菅原 敦史 院長


白内障について教えてください。

 白内障は、目の中の水晶体が白く濁って見えにくくなる病気です。物がかすんで見えたり、光をまぶしく感じたりします。原因の大半は加齢に伴うもので、早い人では40歳代に発症します。50歳、60歳と年代が上がるにつれ罹患率は増え、80歳代ではほぼ100%がかかるとされています。

 初期の白内障は点眼薬で進行を遅らせることができますが、濁った水晶体を元に戻すことはできません。進行した白内障には手術が行われます。手術では眼球に小さい切開を行い、超音波によって水晶体を細かく砕いて取り除きます。代わりに、人工の水晶体である「眼内レンズ」を挿入します。局所麻酔を使用するため手術中の痛みはほとんどありません。手術は10~15分で終了し、最近は日帰りでの手術が主流になっています。


白内障手術には選定療養で多焦点眼内レンズが使えると聞きました。選定療養とは何ですか。

 眼内レンズは1つの距離に焦点を合わせた「単焦点レンズ(保険診療)」が使われていますが、近年では、遠距離と近距離の2点に焦点が合うように設計された「多焦点レンズ」も一般的になってきました。遠・中・近距離の3点に焦点が合うものや、遠景から近くまで連続的に見られるタイプなど、さまざまな多焦点レンズが登場しています。

 多焦点レンズを使用する白内障手術は、2020年3月まで自費診療でしたが、同年4月から厚労省が定める「選定療養(費用の一部を公的医療保険と併用できる制度)」の対象となっています。施設要件を満たす医療機関で、国内で承認された多焦点レンズを使用する場合、自己負担を軽減できるようになりました。多焦点レンズにかかる費用は自己負担ですが、白内障手術自体は健康保険から給付を受けられます。

 単焦点レンズは、遠くか近くのピントが合わない方を見る時はメガネが必要です。多焦点レンズは、日常的にメガネに頼らず生活できるのが最大のメリットです。ただし、単焦点レンズと比べ、色の濃淡の感度は落ちます。また、夜間に街灯や車のライトがぼやけるハローや、まぶしく感じるグレアと呼ばれる現象が起こりやすく、こうした欠点を強く感じる人もいます。それぞれのレンズの特徴をよく理解した上で、医師とじっくり相談しながら比較し、価格面も含め自身のライフスタイルに合わせて納得してから治療を受けることが大切です。


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