2022年2月9日水曜日

両足同時の人工膝(ひざ)関節置換術

 ゲスト/医療法人知仁会 八木整形外科病院  上田 大輔 医師


人工膝関節置換術について教えてください。

 中高年の膝の痛み、その原因は主に「変形性膝関節症」です。加齢によって関節軟骨がすり減り、膝が炎症を起こして痛みます。進行すると徐々に膝が変形し、痛みも増していきます。一度すり減った軟骨は元に戻すことができません。悪化して日常生活に支障が出たり、趣味やスポーツなどやりたいことができなくなったりした時、手術が治療の選択肢に入ります。

 症状が進行期や末期に達している場合の代表的な手術の一つが「人工膝関節置換術」です。傷んだ関節の骨と軟骨を取り除き、人工関節に置き換える手術で、術後はほぼすべてのケースで痛みが消え去ります。膝関節の表面すべてを人工関節に換える「全置換術」と、悪くなった一部分だけを換える「部分置換術」があります。部分置換術は、靭帯の損傷がなく、内側もしくは外側だけに軟骨の損傷が限定される場合などに適応となりますが、全置換術と比べると骨を削る量も出血量も少なく、リハビリによる回復速度も早いです。また、術後の関節の動きもより自然に近いです。


両足同時に人工膝関節置換術を受けることはできますか。

 変形性膝関節症は、両膝ともに悪化するケースが少なくありません。両足に手術する必要がある時、従来は期間をあけて片方ずつ行うのが一般的でしたが、手術していない側の膝の変形や動きの制限が強い場合など、全体のバランスが悪くなることで歩きにくくなったり、手術した膝の動きの改善がわるくなるリスクもありました。近年は患者さんが希望すれば、年齢や持病など全身状態を考慮した上で、両膝同時に手術する例も増えています。前述したリスクを回避できるほか、麻酔・手術・入院が一度で済むので精神的にも経済的にも負担は減ります。

 変形性膝関節症の進行度合いや、患者さんが術後に望む生活やスポーツの活動性などによっていろいろな治療法や術式があります。保存治療がいいのか、手術がいいのか。手術なら、人工膝関節置換術がいいのか、骨切り術がいいのか。人工膝関節置換術なら、全置換術がいいのか、部分置換術がいいのか。また、片方ずつ手術するのがいいのか、両膝同時に手術するのがいいのか。できるだけ多くの治療の選択肢を用意している医療機関を受診し、医師と十分に相談してから納得のいく治療を選ぶことが重要です。

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