2021年2月10日水曜日

コロナ禍にあって〜女性のうつ病について〜

 ゲスト/福住内科クリニック 佐藤 康裕 院長


新型コロナウイルス流行に伴う外出自粛や休業要請によって、うつ症状など精神面での不調を訴える人が増えていると聞きますが、どうしてなのでしょうか。

 長引くコロナ禍もあって、多くの人の心は疲弊しています。コロナ禍で行動変容を求められた結果、憂鬱(ゆううつ)な気分が続いたり、不安、焦りといったうつ病の症状を訴えたりする人が増えています。いわゆる「コロナうつ」です。

 全国の自殺者も増加の兆しをみせています。警察庁の速報値では、2020年8月の自殺者は1849人で、前年同月より246人も増えています。特に女性への影響は深刻で、前年8月よりも45%も増え、男性の10%増と比べて顕著です。9月以降も女性の自殺は急増しています。なぜ、このようなことが起きているのでしょうか。コロナによる外出自粛で、夫や子どもの在宅が増え、これまで以上に家事や育児に負担がかかっていると指摘されています。実際に、私が診察する女性のうつ病患者さんも、家事や子育て、介護など家庭のケアワークの重圧をストレスに感じているケースが非常に多いです。また、雇用状況も大きく影響しているものと指摘されています。女性はパートや派遣社員など非正規雇用で働く人が多いため、コロナ禍による景気の悪化で、解雇や雇い止めなどの影響を受けやすいからです。先が見通せない不安や生活困窮も自殺の背景となる要因と考えられます。相次いだ有名人の自殺やその報道が与えた影響も少なくないと思います。

 男女にかかわらず、日本では公の場で孤独や苦悩を打ち明けることを不名誉ととらえる風潮があるように思います。うつ病など心の病と指摘されることを恥ずかしく思い、悩みや辛さを我慢してあまり口にしたがらない傾向があります。かえって孤独感や寂しさが増し、精神状態が悪化する要因となります。ツールの変容などによるコミュニケーションの変化は、人が慣れていくのに本来時間がかかるものです。新しい生活様式などあまりにも変化が早く、半年〜1年ぐらいでは人はついていけません。人間にとってコミュニケーションやつながりが生理的に深い意味を持っていることを、あらためて見つめ直す機会だと思います。

 気持ちの沈みや不眠、イライラ感、食欲低下、体のだるさは、だれにでも起こりますが、その強さと期間が長く続くなと思ったらそれがサインです。これまで心の問題を抱えながらも耐えていた人が、“新型コロナ”で最後の一線を越えてしまったケースも少なくないでしょう。頑張りようのない不安に気付いたら、病院に相談してほしいです。


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