関節リウマチの治療では、免疫を抑える薬を使うため、感染症にかかりやすくなると聞いたことがありますが、本当でしょうか。
関節リウマチは、本来は外敵から自分を守ってくれる免疫細胞が誤作動を起こし(免疫の異常)、自分自身の組織を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の病気です。全身の関節に腫れや痛みが生じ、徐々に軟骨や骨が破壊されていきます。
この免疫の異常は、病原体に反応できない免疫不全とは異なります。リウマチ治療薬の多くは、過剰な免疫を調整することで症状を抑えたり改善したりします。治療薬には抗リウマチ薬、免疫抑制剤、生物学的製剤、分子標的治療、副腎皮質ステロイドなどがあります。
古典的な抗リウマチ薬は、免疫を抑える働きがあまり強くないので、感染症リスクは少ないと考えられています。一方、副腎皮質ステロイドは炎症を取り除く作用は強いのですが、感染症リスクが高いため、必要最小限の使用が望まれます。生物学的製剤や分子標的薬は、普通は何でもないような毒性の弱い細菌やウイルスに感染する日和見感染症のほか、結核、帯状疱疹(水ぼうそうウイルス)への注意が必要とされています。
関節リウマチの活動性が高い(症状が出やすい、重い)ときは、活動性が低い(症状が落ち着いている)ときに比べ、感染症にかかるリスクは高く、関節リウマチに対する必要十分な治療が必要です。感染症にかかることが怖いからといって、治療を中断してしまうとかえって健康を害するおそれがあります。
感染症にかかってしまった場合は、免疫抑制作用のあるリウマチ治療薬は、感染症に悪い働きをする可能性があるので、一時的にリウマチ治療薬をお休みすることもあります。
新型コロナウイルスの感染を心配される患者さんも多いようですが、現時点では、関節リウマチの患者さんが新型コロナウイルスに対して特にかかりやすい、あるいは重症化しやすいという報告はありません。また、一部の生物学的製剤や分子標的薬が新型コロナウイルスの予防や治療に有効であるという報告もあるようですが、まだデータが少なく、効果は明らかではありません。
関節リウマチの患者さんは、必要以上に感染症をおそれることはありません。ただし、もし感染してしまうと、薬剤の服用に注意が必要となりますので、普段から手洗いやうがいの徹底、インフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種など、しっかり感染予防対策を行うことが大切です。